幅の広い道路とマンションの相性
都市計画上、片側2~3車線のいわゆる大通り、幹線道路と呼ばれる道沿いでは、概して容積率(敷地面積に対する延床面積の割合である)は高めに設定されている。交通利便を鑑み、人の往来も多い路面には店舗を、上層は事務所なども構えられるよう制限を緩和し、街の活性化を促すのがねらいだ。したがって、大通り沿いは中高層のマンションが立ちやすい条件を備えているといえる。オフィス需要が盛んな都心部をのぞき、環状6号線<通称「山手通り」>あたりから、駅前立地を除く郊外の環状道路や放射状に伸びる国道沿いにマンションができるのは、至って自然な現象といえる。
しかし、住環境として見た場合、その評価は分かれるだろう。眺望が開ける、とくに南方向が低層住宅街であれば日照も確保しやすメリットが得られる一方で、車両の騒音や排ガスが暮らす上ではデメリットになるから。マイナス面を考慮して周辺相場より割安に設定される分譲現場もあるようだが、家族構成や価値観など世帯によって条件の受け止め方は大きく異なるだろう。
見違える環境、景観
ところが、最近大通り沿いの環境面において、状況が変化していることに着目したい。ここでは3つのポイントを取り上げてみる。まずは、車の改善。ハイブリッド車や電気自動車など先進のエコカーはエンジン音が小さく、排ガスも微量(もしくは出さない)。騒音に関しても規制強化が図られ、爆音を出して行き交う車やバイクもかなり減った印象。アンチロックブレーキシステムや衝突防止装置など安全技術も普及し、事故リスクも低減していると推察できる。
次に道路整備が挙げられる。場所によって優劣が付くだろうが、例えば首都高速が地下を走るようになって「山手通り」は渋滞が緩和された。歩道と車道、それにバス停留所が確保されたことで走りやすさも格段に改善。他の幹線道路でも活用されている「二層式低騒音舗装」も快適である。タイヤ音を吸収するため、沿道の騒音がかかなり低減。アスファルトの改良はその効果を誰もが実感できるだろう。
最後に景観を取り上げたい。「東京五輪2020」開催決定は都市力を引き上げる様々な施策に拍車をかけている。その一環が「電線類地中化事業」。電線がなくなるだけで大して変わらないだろうと思う方もいるかもしれないが、景観は見違えるといって過言でない。他にも「道路緑化事業」など改善の試みは着々と進み、いずれ不動産の価値を高める効果があると予想する。
車両交通の革新を控えて
強調したいのは、上記3点がまだ途上にあること。とくに、車両の改善がそうだ。この分野は新たな革新が続々と生まれそう。2014年12月にトヨタが発表した新型燃料電池自動車「MIRAI」。グーグルはハンドルさえない、自動輸送車両を開発中と聞くし、アップルも車両製造に手を挙げたという。騒音や排ガスを抑制した車両。衝突防止装置を搭載した車両。歩行者や自転車がストレスなく行き来できる道路を想像してみよう。鉄道輸送を主軸に評価されてきた不動産の利便性が根底から変われば、住まいの資産性も自ずと変化していくだろう。
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