本人が保険金を請求できない状況にあるときは
わが国は急激なスピードで高齢化が進んでおり、今後、認知症の高齢者も増加すると見込まれています。こうした中、火災保険の契約者である親が認知症になったり、寝たきりで意思確認ができなくなると、請求権者である親本人が保険金請求を行えなくなる可能性があります。こうした場合は、成年後見人がいる場合は成年後見人が請求を行います。一方、成年後見人がいない場合には、一定の親族が代理で請求を行うことになります。多くの保険会社では、配偶者または3親等以内の親族で代理請求が可能である旨が約款に規定されています。
また、高齢の親が住む住宅で火災が発生、不幸にも親が死亡した場合には、親が契約していた火災保険の請求を法定相続人が行えます。ただし、続柄の確認のため戸籍を確認する手続きが必要となるなど、一定の手続きが必要なこともあります。
ところで、所有者が住宅とともに死亡するようなケースでは、火災保険の契約があったにもかかわらず、火災保険金が請求されないままとなるケースも考えられます。火災保険に限ったことではありませんが、亡くなった人がどのような保険に加入していたかを、別居の家族が後から探すのはかなり大変です。このような場合でも確実に保険金を請求するためには、あらかじめ親が掛けている保険のコピーを送ってもらうなどし、イザという時のために情報を事前に共有しておくといいでしょう。
空き家になった両親の家は火災保険に入れるか
空家でも火災保険の加入は必須
こうしたケースはわが国で増え続ける「空き家問題」の要因のひとつにもなっています。わが国の空き家率は現在13.5%で、昭和38年以降、一貫して増加し続けています(総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」)。空き家総数は820万戸で、5年前に比べて63万戸も増加している現状があります。すでに持ち家を取得した子ども世代にとって、住むつもりのない実家はなかなかの重荷でしょう。
しかし放置された空き家は、時間の経過につれ防災上・防犯上の危険が増します。自分で住むことがないとはいえ、親の家を相続して所有を続ける限り、空き家にも一定の管理は必要です。住宅倒壊等で第三者にケガを負わせたり、あるいはモノに損害を与えた場合には、所有者としての責任が問われることになります。また、第三者に損害を与えなかったとしても、放火されたり、自然災害で損害を被れば、住宅の取り壊しにも残存物の後片付けにも費用が発生することになります。
空き家であっても火災保険には入ることができますから、切らさず契約をしておきましょう。ただ空き家になってからは居住している場合に加入できる住宅用の火災保険ではなく、事務所や店舗物件用の火災保険(「一般物件といいます」)に入ることになり、保険料はこれまでより高めになります。
「所有する」ということは、コストも相応に負担しなくてはならないということ。こうした高齢者の住宅事情なども踏まえながら、自らが高齢者になった時の住まい方についても、思いを致したいものです。
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