大学生の就職活動/就職活動での自己分析

若者におそれず経験してほしい「キャリアの脱線」とは(2ページ目)

働く人のキャリアは、実はまっすぐひかれた1本のレールを進むということがほとんどなく、大抵は何度か脱線をしながらもその進んだ道で新たな発見や出会いと巡り会い、気づいたら「天職」ともいえる1つの目的地にたどり着いていることの方が多い。今回は若者のキャリアデザインにとって重要な「脱線」について解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

今の仕事にもつながるガイドの意図的な脱線

実はガイドである私自身も人生を振り返ると「意図的なキャリアの脱線」と「偶発的なキャリアの脱線」が多々あり、それらが今の仕事につながっていると感じている。
アメリカ留学と採用支援の経験がなければ今の仕事はしていなかったかもしれない

アメリカ留学と採用支援の経験がなければ今の仕事はしていなかったかもしれない



「意図的なキャリアの脱線」は高校の進路決定の時だ。高校3年間は勉強などほとんどしておらず、部活のラグビーばかりしていた。3年時には北海道代表に選ばれて国体に出場できたりしたので、いくつかの大学からラグビーでの推薦をもらうことができた。その中には強豪として知られる有名校もあり、普通ならそのチャンスを活かして日本の大学に進学してラグビーをやるのが進むべきレールだったのだが、自分は「意図的に脱線」した。

すべての大学からの推薦を断り、アメリカへの留学を決断した。しかしラグビー漬けの3年間で勉強を疎かにしていたため、英語力がひどかった。そのため日本にもキャンパスがあり2年間英語などの準備をしながら留学を目指せる大学を選んだ。脱線をしたことで荒野を進むことになり大変苦労したが、実際にアメリカで素晴らしい大学教育を受け、こういった“楽しく学べる教育”が日本にもあれば良いと思い「若者の教育」に興味を持った。きっと日本でラグビーをやっていたら興味の中心は「スポーツ」だっただろう。


計画的偶発性を身をもって体験する

偶発的なキャリアの脱線」はリクルートに就職した時だ。日本の大学教育に関心があったので「進学ブック」など大学とのビジネスができる「進学事業部」を第一希望で志望していたが、実際に配属されたのはもっとも配属されるのが嫌だった「HR(人材採用)事業部」だった。

企業に営業を行い求人広告を出してもらうことで企業の採用支援を行う仕事で大学教育とはまったくかけ離れていたので、最初はまったくやる気が出なかった。しかしやっている中で企業側の採用事情や人事の気持ちを知る機会となり「これは就職活動をする際の若者の教育が必要だ」と思うようになった。もし「進学事業部」に配属されていたら、大学の入試広報のプロにはなっていたかもしれないが、就職活動時の教育に関してはまったく問題意識を持たなかっただろう。

そして結果的には現在「若者の就職活動支援のプロ」として多くの若者の就職活動の支援を行い、全国の大学ではアメリカで経験した「学生が主体的な授業」を行うためのキャリア教育プログラムを広める仕事をしている。そして私自身はこの今の仕事が自分の「天職」だと思っている。

当然「キャリアの脱線」を経験した瞬間は、意図的であれ偶発的であれ、不安や苦労を経験する。しかし最終的にはあの時新しい道を一生懸命進んだことで得たものが、今の自分の人生の糧になっていると感じる。

そしてそれはガイドである私だけではなく、世の中に数多くいる「天職と巡り合えた人たち」に共通していることかもしれない。ぜひさまざまな社会人の「キャリアの脱線」を聞き、自分の将来に活かしてみてほしい。
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