決して小さくなかった、日本球界8年のブランク
異例の非公開練習を行ったソフトバンク・松坂投手。
“マツのカーテン”を引いた裏には、メジャーリーグから9年ぶりに日本球界へ復帰することへの苦悩が見え隠れする。
シャドーピッチングの“11球目”を終えると、松坂は取材エリアに近づいて来て、こう口を開いた。「あの……いいですか? 退出して頂いて」。口調は穏やかだったが、その表情は真剣だった。
ブルペンのアルミ製の扉を閉める“マツのカーテン”。ミットの音が響き出し、扉が開いた36分後には、松坂のシューズのつま先は黒く汚れていた。
「集中してやりたかった。(今の段階では)まだ見せられるものではないし、きれいな形ではないので。あまり見られたくない」
9年ぶりとなる日本球界復帰に対し、やらなければいけないことがある。日本から海を渡った時に対応したことを元に戻さなければならない。ボールとマウンドの軟らかさへの対応だ。
ボールに関しては、さほど問題ではない。材質が良く、大きさも小さく、滑りにくい日本のボールは、メジャーのボールに比べれば投げやすい。問題はマウンドの軟らかさである。
メジャーのマウンドは硬く、球場によってはスパイクが入りにくいほどだ。したがって、上半身を使った立ち投げに近いものになってしまう。それに比べ、日本のマウンドは土が軟らかいため、ステップする左足の感覚が違ってくる。当然、投球フォームも調整しなければならない。
「久しぶりの感覚。(左足が)着くたびにずれるというか、沈む」
松阪の8年間のブランクは、けっして小さいものではなかったのだ。
>>今シーズン、松坂に求められるものとは