「ラズウェル細木のマンガはじめてのジャズ教室 これだけは知っておきたいジャズの知識」ラズウェル細木
ラズウェル細木のマンガはじめてのジャズ教室
「ラズウェル細木のマンガはじめてのジャズ教室 これだけは知っておきたいジャズの知識」は、日本のジャズ・マンガの第一人者、ラズウェル細木のジャズの歴史講座マンガです。
主人公はジャズの伝道師ラズウェル先生。そのラズウェル先生が、一般の高校生や奥様方を相手に、時に可笑しく、時に真面目にジャズの歴史をひもといていくという流れになっています。
内容はもちろん、本自体の装丁も手に取りやすいサイズで、カバンに入れて持ち歩きにも便利。これからジャズを聴いていこうと思う方の心強い指南書になること請け合いです。
内容は項目ごとにおススメのアルバムが記載されており、そのラズウェル先生のおススメ盤が、いわゆる世に広く言われている名盤だけではなく、ジャズを愛し造詣が深い著者の主張があるものばかりで、思わずニヤリとさせられてしまいます。
本の内容に、ジャズの「ジャポニズム」に関する説明があります。以前私が記事で書いたデューク・エリントンの「極東組曲」がその「ジャポニズム」に相当します。あくまでも、ジャズメンが感じた日本の姿なので、それぞれのジャズメンの日本に対するアタッているもしくはズレている感性がわかって面白いところです。
そこで、今回はいわゆる「ジャポニズム」とは違い、そもそも日本の曲をアメリカのジャズメンが演奏したらどうなるか、という演奏をご紹介します。
ジーン・クルーパ 「Complete Jazz Series 1952 - 1953」より「ダッジャーズ・パーティ」(証城寺のたぬきばやし)
なんとここでは、日本の童謡「証城寺のたぬきばやし」を本場有名ジャズメンが大真面目に録音しています。演奏したのは、当時の大スター、ドラマーのジーン・クルーパ。ジーン・クルーパと言えば、何と言ってもベニー・グッドマン楽団での「シング・シング・シング」で世界的に有名になったジャズ史の中でも偉大なドラマーです。
そのジーンが、サックスとピアノとのドラム・トリオで吹き込んだ「証城寺のたぬきばやし」。そこには、どのような物語があるのか、演奏だけではなくそのシチュエーションからワクワクしてしまいます。
「しょっ、しょっ、しょじょうじー」と歌われる誰もが知っているこの曲。千葉県木更津市のお寺に伝わる「たぬきばやし伝説」を歌ったもので、1925年(大正14年)に発表され、以来童謡として親しまれている古い曲です。
原曲のイメージを知っているだけに、サックスにビ・バップの名人チャーリー・ヴェンチュラ、ピアノにテディ・ナポレオン、そしてドラマー、大スターのジーン・クルーパのトリオでも、どうにもならないのでは? との杞憂は聴いてみてビックリ、すっかり本格ジャズになっているのに驚かされます。
録音の最初の部分にはジーン・クルーパ本人による「いち、にー」という日本語の掛け声が入っています。そのなんとも「ジャポニズム」な掛け声の後、聴きなれたあのテーマがテナーサックスで…
さすがにテーマでは笑ってしまいますが、アドリブに入るとテナーサックス、チャーリー・ヴェンチュラのビ・バップ・テイストのモダンなソロが飛び出してきて一気に場面は千葉のお寺からアメリカへ!
この演奏は1952年のジーン・クルーパ来日時に日本ビクターで正式に録音されたものです。ところが、実はこの録音は他のレコード会社と契約しているジーンにとっては完全に契約違反。一説によると「銀座」での接待に気を良くしたジーンが、思わずOKをしてしまったものだそうです。遠い異国の日本での出来事とは言え契約は契約、あとになってジーンはレコード会社より大目玉をくらったとか。
日本だけで発売されたもののすぐに廃盤となったという、実にジャズメンらしいエピソードのこの貴重な録音。現在では、このコンプリート盤で手に入ります。
この来日時にはほかに六曲録音しており、「Complete Jazz Series 1952 - 1953」には、滝廉太郎の「荒城の月」も録音されています。そちらも、立派なジャズとして聴くことができるのがさすがです。おおらかな時代のおおらかなジャズ、ぜひ聴いてみてください。
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