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バウムリンド博士の研究4つの養育スタイル……50年の子育て研究
50年かけての研究から、子供が最も健やかに育つ子育てスタイルというものがあると分かっています。
これまで50年近くかけての心理学や人類学の研究の積み重ねの中で、子供が知的面、情緒面、社会面全てにおいて、最も健やかに育つ「子育てスタイル」というものがあると報告されています。しかもそのスタイルとは、同じ文化背景に暮らすA君やB君だけでなく、地球上様々な地域の大きく異なる環境に育つ子供達、例えば翔太君や美咲ちゃんやジョージ君やホルヘ君やオルガちゃんやムハンマド君を調べてみても、より優れたスタイルである場合が多いということが分かっています。
心理学者バウムリンド博士の研究に基づく4つの子育てスタイル
「子育てスタイル」の研究は、 1966年に心理学者ダイアナ・バウムリンド博士によって始められました。バウムリンド博士は、親の子供に対しての「責任感」と「要求」の度合いに基づいて、「3つの子育てスタイル」を提唱しました。その後、「もう1つのスタイル」が加えられ、現在「子育てスタイル」の研究では、子育てというものは、だいたい大きく分けて次の「4つのスタイル」で、説明できるのではないかと考えられています。1. 消極的子育てスタイル (Permissive Parenting Style)
子供の意向中心に物事を進め、リミットを設定し守らせることに消極的な受身スタイルです。子供の感情的ニーズを包み込むといった温かみがあります。
消極的子育てスタイルで育つ子供は、大きくなってから不安感やうつに悩むことも少なく、自己評価も高い傾向にあります。ところが、様々な誘惑に負け易く、何かを成し遂げるということが難しいとされています。
2. 独裁的子育てスタイル(Authoritarian Parenting Style)
子供の意向や感情的ニーズに関わらず、有無を言わせず頭ごなしに子供を従わせるスタイルです。従わない場合は、罰を持って接します。
独裁的子育てスタイルで育つ子供は、一見行儀良く「いい子」に見えますが、社会的なスキルが欠けていたり、将来的にも、不安感やうつや自己評価の低さに悩むことが多いとされています。
3. 民主的子育てスタイル(Authoritative Parenting StyleまたはDemocratic Parenting style)
子供の意向を尊重しつつ、かつリミットを設定し、ルールを守るよう促しながらも、親が期待することの理由を説明し、子供の感情的ニーズにも責任を持って寄り添うスタイルです。
民主的子育てスタイルで育つ子供は、よりハッピーな気質を持ち、感情を自制でき、優れた社会性に恵まれ、自分の能力にも自信を持つと、多くの研究が示しています。
4. 無関心な子育てスタイル(Uninvolved Parenting Style)
衣食住の供給といった最低限のニーズを満たすものの、リミットの設定にも子供の感情的ニーズにも無関心なスタイルです。
無関心な子育てスタイルで育つ子供は、知的面、情緒面、社会面のあらゆる面に凹みが見られるといいます。非行に走る子供の多くが、このスタイルの家庭で育つとされています。
あなたの子育てはどんなスタイル?
以下は、4つのスタイルを表す具体的な特徴です。それぞれの項目について、 「5. かなりある 4. ある 3. 少しある/ あまりない 2. ない 1. 全くない」といった5つのスケールで、答えてみてください。スケールの数値が大きい項目のスタイルが、あなたの子育てスタイルの「傾向」を表しています。1. 消極的子育てスタイル
a. 駄々をこねたり泣き出すと、言い分どおりにする。
b. 好ましくないことをしても、機嫌を損ねるような口出しをしたくない。
c. 少しでも嫌がるならば、すぐに止めさせる。
d. いつも笑顔でいて欲しい。
2. 独裁的子育てスタイル
a. 子供に対し怒りを爆発させ、怒鳴る。
b. どうして?と聞かれると、「どうしてもこうしてもない!親の言うことを聞きなさい!」などと答える。
c. 親の期待に答えられないと、あからさまに批判する。
d. 親の望まない行為に対し、愛情表現を引っ込めるという形で罰を与える。
e. 好ましくない行為に対し、体罰を与える。
3. 民主的子育てスタイル
a. 子供が自身の気持ちや考えを表現することを励ます。
b. 親の意見とは違っても、話し合う機会を与える。
c. 動揺していたら、気持ちに寄り添ってやる。
d. リミットやルールの背景を説明し、子供自らが守るよう導く。
e. 何かをして欲しい時は、その子自身の意向や気持ちを考慮する。
f. 親が子供に期待することの理由を説明する。
g. 一緒に楽しむ時を持つ。
4. 無関心な子育てスタイル
e. 子供がいてもいなくても生活は何も変わらないと思う。
f. 子供は自分のことは全て自分でするものと思う。
g. 自分のことで頭がいっぱいで、子供について思う余裕がない。
あなたの子育てには、どんな傾向が見られますか?
子育てスタイル間でバランスを取ることが大切
4つの子育てスタイルの中で、「民主的子育てスタイル」こそが、子供が最も健やかに育つ理想の子育てスタイル、とされています。とはいっても、“1つのスタイル”にすっぽりはまる子育てなんて、そうはないものです。するべきことに追われていれば、「ごちゃごちゃ言ってないでママの言う通りにしなさい!」と声を荒げることもあるでしょうし、怒りのボタンを押し続ける子供に対し、愛情表現なんてとんでもない!と感じることもあるでしょう。一日を終えくたくたになっていれば、少々悪さをしても、ただその子の笑顔を見ていたいとも思うものです。「子育てスタイル」の研究は、子供を前に日々揺れ動く中で、ちょっと厳しく抑えつけ過ぎたかな、ゆるゆるにしたい放題させ過ぎてるかな、最近は忙しくてあまり思ってやれなかったな、そう自らの子育てを見つめ、調整するための「指標 (目じるし)」に用いることができます。
それぞれの子育てスタイルの特徴を思い出し、ああ昨日は独裁者ばりの子育てになってしまった、今日はより「子供 のための」民主的な子育てができたかもしれない。そう異なるスタイルの間を行き来しつつ、バランスを取り戻す参考にしてみてください。
なお、中国では独裁的子育てスタイルによって、学業面がより伸びる、スペインでは消極的子育てスタイルが、民主的子育てスタイルと同じくらいよい結果を生み出すといった研究報告もあります。それでも、全体的にほとんどの地域で、締め付けと緩みのバランスの取れた民主的子育てスタイルが、より健やかな子供の成長に繋がるとされています。
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