100年店ランチ/東京の100年店ランチ

小春軒(洋食店/人形町/創業1912年)(2ページ目)

一切作り置きをせず、出来立ての料理を提供……今回は人形町の洋食店、「小春軒」をご案内します。

菅野 夕霧

執筆者:菅野 夕霧

100年店ランチガイド


名物「カツ丼」は、戦前から復活の一品

特製盛り合わせ

特製盛り合わせ

この日は友人と2人、13時過ぎに伺います。少しラウンドしたカタチで掲げられている白い暖簾(のれん)をくぐり店内へ入ると、ほぼ席が埋まっています。女将さんに促され、他の方と相席となるテーブルにつくことに。小春軒は、4人掛けテーブルが4つ、カウンター3席という小規模な家族経営の店です。ランチタイムはほぼ相席になります。

メニューを眺めるとは800円~1400円という価格帯で、すべてライス付きです。わたしのお目当ては「特製盛り合わせ」(1400円)。友人は初訪問ということから、同店名物の「カツ丼」をオーダーします。

運ばれてきた特製盛り合わせは、一皿にさまざまな揚げ物や焼き物が盛られている名前通りの一品です。内容は海老フライ、白身魚のフライ、ホタテのフライ、一口カツ、コロッケ、イカのバター焼き、カジキマグロのバター焼きとサラダ。カジキは鉄串に刺さっているので、「熱いからこれを使って抜いてね」と女将さんから紙ナプキンを渡されます。しかし多彩な内容ですね。
名物の「カツ丼」

名物の「カツ丼」

一方同店のカツ丼は、想像を裏切ってくれる一品です。まずはビジュアル。コロコロした賽(さい)の目切りの野菜、そして中央に半熟の目玉焼きがあり、それらの下にカツが隠れています。私も過去にいただいたことがありますが、デミグラスソースの味付けは、ライスが進みます。このカツ丼は、戦前のメニューで、現在4代目とともに厨房に立つ3代目の記憶を頼りに、復活させたという物語ある一品です。こちらの名物丼には「しじみ汁」が付きます。

2人ですいすい食べ進める中、相席の方が食べている皿が気になります。メニューをよく見直すと、期間限定メニューだと判明。「次回はこれだな」という思いを抱きつつ完食し、この日は店を後に。

作り置きをしない、「出来立て提供」へのこだわり

季節限定メニュー「カキバター焼きライス」

季節限定メニュー「カキバター焼きライス」

別日、13時半くらいに今度は1人で伺います。この日はカウンターに着席し、一応メニュー表を眺めます。10月から3月の季節限定メニューは、「カキフライライス」(1200円)と「カキバター焼きライス」(1300円)です。カキフライは、おおよそ想像ができる……先日相席の方が食べていたのはバター焼きだ……と1人、頭の中でメニュー決定会議を終え、カキバター焼きライスをオーダーします。

出てきた一品は、なかなか大ぶりの6個のカキ。衣は薄く、醤油バターを感じさせる見た目です。添えられたレモンを絞り、口に運ぶとカキ特有の濃厚な汁が溢れます。ランチで出会うカキは、イコール「フライ」というのが大勢の中、これは差別化としてもいいアイデアですね。

同店には、1つの特徴があります。それは、作り置きをしないこと。注文が入ってから1つ1つ作るので、熱々の出来立てをいただくことができます。そういった経緯から、作る工程が多く手間が必要な、洋食店の代表メニューのオムライスを置いていません(ちなみにオムレツとライスを提供するメニューはあります)。

人形町駅のほか、水天宮駅からも近い立地

人形町駅のほか、水天宮駅からも近い立地

「出来立ての提供」へのこだわりは、初代から続くモットー「気どらず美味く」が受け継がれている証しです。この文言は、メニュー表の冒頭にも記載されています。

明治から大正へ、時代が境目の年に生まれた洋食店で、ランチはいかがでしょうか?

■小春軒
・住所:東京都中央区日本橋人形町1-7-9
・TEL:03-3661-8830
・営業時間:11:00~14:00、17:00~20:00(土曜は11:00~14:00)
・定休日:日曜・祝日
・地図:Yahoo! 地図情報
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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