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阪神淡路大震災から20年で住宅の地震対策はどうなった(2ページ目)

間もなく阪神・淡路大震災からちょうど20年を迎えます。それにあたり、この記事ではその後に実施されるようになった地震対策についてまとめてみました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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制震は地震の揺れをエネルギーを小さくし、建物へのダメージを減らすという考え方。軸組構造の建物の場合、制震装置と呼ばれるものを柱と柱の間にある筋交い部分に取り付けたり、パネルタイプのものを取り付けるものなどがあります。

現実的な地震対策として普及が進む「制震」

代表的なものに高減衰ゴムによる制震装置があり、これは地震の揺れの力を熱に変えることにより、揺れを小さくします。鋼製品や油圧ダンパーなどを取り付けるタイプもあり、事業者間で技術を競っています。

制震装置

ミサワホームの木造軸組住宅「MJ Wood」に採用されている制震システム。上部と下部に内蔵されている「高減衰ゴム」が地震エネルギーを熱エネルギーに変換・吸収し、揺れを抑える仕組み(クリックすると拡大します)

導入費用が免震に比べて格段に抑えられ、標準的な建物で1棟50万円ほどのコスト負担ですむと言われています。その上建物の形状や地盤にもまり左右されません。ですので、現在、「現実的な地震対策」として普及し始めています。

プレハブ系ハウスメーカーが先導的に導入してきましたが、最近は地域の工務店などでも対応するようになりました。また、制震ゴムの部分に同じような機能がある鋼製品や油圧ダンパーなどを取り付けるシステムもあり、中には標準で取り付けるようにした事業者もあります。

免震との違いは制震は結構揺れること。中でも2階など上階の揺れは相当激しくなります。制震の目的は、あくまでも建物の変形を抑えることであり、それにより建物の致命的な損傷が抑えられ、しかも複数の大規模な地震に耐えられるということです。

次に(2)の「火災の発生を防ぎ、類焼被害にあわない」について。まず基本的なこととして、準耐火構造、耐火構造があることを覚えておきましょう。ちなみに、前者は45分間火災に耐えること、後者は60分間火災に耐えるだけでなく、その後も建物の構造を維持できることが条件です。

木造住宅では従来、都市部の耐火構造が求められる地域で、3階建て以上の建物を建てるためには制約が多かったのですが、阪神・淡路大震災以降には外壁材などの性能が高まったことで状況がずいぶんと改善されました。

近年は、例えば東京都中央区の銀座などのような場所でも木造の耐火建築物が建てられるようになっています。要するに、木造、鉄骨造、RC造などの工法・構造を問わなくなってきています。

なお、「火災の発生を防ぐ」という点ですが、これについては2006年(平成18年)6月に新築住宅には火災報知器を設置しなければいけないこととなっています。

作り付け家具とすることで大ケガのリスクを回避

免震装置

免震システムの基幹部分。この場合、真ん中の部分に鋼玉が入っており、これが動くことで地震の揺れを建物に伝えにくくする(クリックすると拡大します)

(3)の「家具などの飛散を防ぐ」については、阪神・淡路大震災以降は作り付けの家具を新築時に取り付けることが、ハウスメーカーなどで推奨されるようになりました。阪神・淡路大震災では、地震の揺れで家具などが倒れたり、中には飛んできたものもあり、それが居住者の大ケガにつながったためです。

新築住宅を建築・購入する際に一度、手持ちの家具を処分して、作り付けの家具とするのも地震対策としては有効だということです。もちろん、既存の家具を固定する工事にも対応してくれるはずですから、事業者に相談してみて下さい。

最後の(4)「生活再建をしやすくする」というのは、これまで挙げた(1)~(3)に加え、食糧や水などの備蓄、エネルギーの確保をするということです。これらの備えがあると、仮に避難生活をするにしても比較的短くできますから、精神的な負担も軽くなるはずです。

例えば、食糧や水といった基本的な蓄えについても、日頃から保存状況がわかり、更新がしやすいようにしておくことも大切で、これは単に収納場所を確保するだけでは不十分。日常生活の収納と災害備蓄を両立させるための収納アイデアも近年、住宅事業者の間で提案されるようになりました。

東日本大震災の際にはエネルギー不足が深刻化しましたが、太陽光発電システムを取り付けておくだけでも最低限のエネルギー確保につながります。最近では家庭用燃料電池や蓄電池と組み合わせる事例も増えてきました。

首都圏直下型地震など今後も大きな災害の発生が予測されています。この機会に、これから取得する住宅はもちろん、現在お住まいの住まいについても地震対策について再検討してみてはいかがでしょうか。
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