新しいインターフェースが欲しかった
ガイド:以前のインタヴューでされた「サイン波は自分にとっては創作の源」という中野さんの発言は、とても印象的でした。スカイセンサー、超音波センサーなどについて詳しく解説頂きましたが、これらを自分の音楽に取り込もうと考えたきっかけがあれば、教えて下さい。
中野テルヲさん、活動再開! (All Aboutテクノポップ)
中野テルヲ~Deep Architecture (All Aboutテクノポップ)
中野:
例えば超音波センサーですが、キーボードを弾くのがちょっと嫌になってきた時期がありまして(笑)、自分に合ったトリガーのスタイル、何か別の新しいインターフェイスが欲しかったんですね。1994年にヒカシューの坂出雅海さんと実験的なデュオをやったんですけど、そこで坂出さんの光センサーを使ったパフォーマンスに刺激を受けるんです。翌1995年にはICCワークショップ「楽器とアンサンブルのいまとここ」に参加して、人が宙づりの状態でポーズをとって演奏する「Nice Pose」という楽器をアーティストの皆さんと一緒に考えたり。そんな流れからインターフェイスへの興味が深まって。人の動きとシンクロしなおかつ本格的に自分の演奏に使えるようなモノをということで超音波センサーを採用し、高橋芳一君に開発・製作で全面的に協力してもらいました。
ガイド:
なるほど。サイン波の方はどんなきっかけで?
中野:
サイン波に関しては、あるとき自分の使っているミキサーにサイン波を発振させる機能(音響の調整用としてだと思うのですが)があるのを知り、周波数を選択できて外部からのコントロールで楽器のように制御・演奏することが可能だということがわかってからです。周波数分布的にも決まったバランスを取り、自分のサウンドの核になる要素です。
ガイド:
本来楽器として作られていない機能に対する再発見ですね。
中野:
スカイセンサーの受信する信号とノイズ、このラジオの持つ発振器の音はBCL少年時代から慣れ親しんだものです。楽器を演奏する感覚で周波数ダイヤルを回しています。先程のミキサーの使い方もそうですが、本来の使い方とは違う使い方をしていますね(笑)。
ガイド:
これらの機器、いや楽器、は日々改良がされているのでしょうか?
中野:
メンテナンスは必要になりますね。サイン波発振器の電圧は定期的にチェックしています。あ、それから昨年秋のツアーから超音波センサーのフラッシュがキセノン管からLEDに変更されました。LEDは光量が大きいので、キセノン管の光量と残光感に近づけるための工夫を、これも高橋君がしてくれています。