リーンバーンなインターンシップマーケット
インターンシップの効果的な活用とは
しかし、実態をよく見てみると、それらの多くが2-3日以内のカリキュラムで構成されており、One Day型のものも少なくない。学生にとっては比較的気軽に参加できるという利点があり受講希望者が殺到しているが、業務概要のレクチャーや数時間の現場体験、グループワークなどが主なコンテンツのため、仕事の内容を詳しく理解したり、将来のキャリアをイメージするまでにはいたっていないのが現状である。学生が企業の中を見る機会が増えたことは歓迎すべきであるが、そのクォリティの向上が大きな課題といえよう。
インターンシップのポジショニングをシフトする
経団連はインターンシップを、“産学連携による人材育成の観点のもとに学生に就業体験の機会を提供する社会貢献活動の一環”と位置付けている。これは、文科省・厚労省・経産省が定めたインターンシップの導入と運用のための手引きに準じており、あくまでも採用選考とは切り離して考えることを求めている。多くの企業はこの趣旨に則してカリキュラムを設計しているが、一定のコストや手間をかけて運営する以上、やはり採用活動におけるメリットを追求したいと考える。そのため、インターンシップ参加者に対して良い印象を与え、優秀者を採用選考の母集団に取り込むことを目的に掲げる企業が多い。言わば、緩やかなファンづくりという落としどころであるが、緩やかなゴールゆえに、優秀者を判断する評価基準の設定がおざなりになり、結果として、インターンシップでしか発掘できない優秀者を見落としてしまっていることが多い。
インターンシッププログラムを効果的に機能させるためには、まずこのゴールを変えていく必要がある。採用とインターンシップを切り離すということは、インターンシップで発掘した優秀者を採用しないということではない。もちろん、その場で内定を伝えることはあってはならないが、自社の期待値に届いていれば確実に採用できる強固なプロセスを作り上げることをゴールとすべきである。
インターンシップ独自の評価基準の重要性
そもそも、インターンシップを通して評価すべき人材をあらためて考えてみたい。30分程度の短い時間で候補者の能力を推し量らざるを得ない採用面接とは異なり、インターンシップには長期的に人物評価をできる利点がある。つまり、候補者の最大瞬間風速にフォーカスする必要はなく、取り組み姿勢や持続力、時間の経過による変化などを多面的に見ることができるということである。中でも、「成長力」は特に重視すべき点である。インターンシップのプログラムによってどのような点が変化したのかを観察することで、入社後の伸びしろをイメージすることができるからだ。特に、インプットに対する反応を見ることで、成長の源泉となる洞察力や感性、状況適応力といった、面接では判断しにくい能力を正確に把握することができる。
インターンシップ生の評価に際して、採用選考時の評価シートをそのまま用いる例を見受けるが、アウトプットの大きさでよりも参加者の成長ポテンシャルを判断できる独自の評価基準を設けるべきである。