ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

DAZZLEが玉三郎と挑む『バラーレ』。長谷川達也に聞く(3ページ目)

ストリートダンスから派生し、今をときめくダンスカンパニーDAZZLEを、あの坂東玉三郎が演出する!驚きのニュースが飛び込んできて、これはお話を聞かなきゃと思いました。1996年に結成され、国内外で活躍。独自の道を一歩ずつ拓いてきたDAZZLEが、また新たなステージに上がるのか。主宰の長谷川達也さんに伺いました。

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド

宣伝写真

マーラーの「交響曲第4番」を会見で披露。撮影:岡本隆史

“静”の部分、意識を広げる、音楽の解釈など
新たな表現の広がりを実感

——マーラー「交響曲第四番」も難しくないですか。まっすぐなクラシックであるだけに。
難しかったです。この曲は最初にとりかかった曲なのですが、20分間流れるような美しい音楽構成の中で、どうやって僕たちのダンスで展開をつけ、また感情を動かせるのか、とにかく悩みました。そこで、玉三郎さんが提示してくれた「幸福な死」というキーワードを元に、音楽を聞いて想像できる物語を考えて、それに合わせて振付の構成を当てるようにしたら、糸口が掴めました。

——「タンゴ・アルゼンチーノ」は?
振付はこれからですが、僕はタンゴを踊れないし、僕がタンゴをやっても意味ないかな?と思っていて。このナンバーには20名以上のアンサンブルの方が出演するので、どう構成しようか楽しみでもありますね。中にはダンスの強者もいらっしゃるようなので、その方たちの動きにも期待しています。

——会見では思いもよらない部分の筋肉が痛くなったとおっしゃっていましたが、それは今までのDAZZLEの振りとは違うからですか。

先ほどもお話しましたが、今回初めて自分たちが普段表現において内向きになっている部分を広げるということを意識していますから、身体を開いた状態での動きが影響しているんだと思います。他にも玉三郎さんは心の在り方や呼吸のタイミングまで教えてくださるので、ここまでやるから伝わるんだな…と実感しています。

またゆっくり動くことも、僕たちにとっては新鮮です。僕たちはすぐに動き、走ってしまいたくなるけれども、そこをいかにゆっくり見せられるか。“静”があるからこそ、DAZZLEの動きが引き立つことを教えてくれます。最近はその感覚を掴めてきて、気持ちが切れなければ動かなくても大丈夫だとわかってきました。

——今回の経験で、何が得られそうですか。
“静”の部分、意識を広げることなど。それだけでも、今までの倍以上に表現の幅が広がることでしょう。また、マーラーのような曲は初めてですので、音楽的な解釈も深められます。これから様々な曲に挑む自信になるはずです。

子供の頃から映画や漫画、アニメ、ゲームが好き。
まず物語に惹かれてきた

——長谷川さんのお話を伺っていると、物語を作って振付をするスタイルのようですが、もともとストーリーを考えるのはお好きでしたか。
そうですね。子供の頃から映画や漫画、アニメ、ゲームが好きでした。まず物語に惹かれるんです。だから自分で表現したいパフォーマンスって何だろうと考えると、映画みたいにストーリーのあるものなんですね。もちろん僕はダンスの虜になったから踊っているわけですけれども、ダンスを中心に自分の好きなそれぞれの文化を融合したいと思うのは僕にとってはごく自然の流れであって、自ずとDAZZLEの表現は今のスタイルになっていきました。

——DAZZLEは物語性がある分、ダンスファンだけでなく、演劇ファンやミュージカルファンをも取り込んできたように思えます。ダンスより間口が広い感じ。
自分が観たい作品を作るという思いが根本にあって、そして表現者として最も大事なのは独自性だと思っていることもあります。そんな中、ダンスの世界で技術を高めていきたいと思ってやってきましたが、ダンスの技術を高めていった時にそれについていけない人たちがいると感じたことがあるんです。日本はストリートダンスのレベルが世界で一番ではないかというくらい高いのですが、それを知らない人たちが多いことも残念だと思ったし、ダンスに対するイメージ、理解度もまだまだ低いと思っています。

僕はダンスを選んだ以上、ダンサーとして尊重されたと思っていて、そのためにはダンスに価値を認めてもらわないといけません。ダンスや自分の表現に共感してくれる人を増やす必要があります。そのために必要なことは多くの人が素晴らしいと感じる作品をつくること。ダンスがダンサーのためだけに向けられていても広がらないと思ったんです。
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