と、言う事で、今年も3桁の回数客席に座った演劇ガイドが、独断とツボで選んだベスト8プレイをご紹介したいと思います。あなたのお気に入り舞台は入っていますか?
◆2014年 演劇ガイドが選ぶベスト8プレイ 1月~6月上演◆
『国民の映画』 作・演出 三谷幸喜 PARCO劇場
『国民の映画』PARCO劇場(撮影 演劇ガイド・上村由紀子)
三谷幸喜氏の緻密に計算され組み立てられた戯曲に、腕のある俳優たちが命を吹き込む様は鬼気迫るものがありました。特にゲッペルス役・小日向文世さんが「特別な人間」になろうとしてもがく哀愁漂う姿と、執事フリッツ役・小林隆さんの佇まいは胸に刺さります。三谷氏の人間を見る冷徹な目と、温かい視線とが最高に上手く融合している作品だと思いました。
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『おそるべき親たち』 東京芸術劇場・シアターウエスト
作:ジャン・コクトー 翻訳・台本:木内宏昌 演出:熊林弘高出演
佐藤オリエ 中嶋しゅう 麻実れい 満島真之介 中嶋朋子
こちらの舞台も再演作品。初演(2011年)と同じキャストが集結し、ある”事件”をきっかけに「家族」の間に起きる感情のぶつかり合いが時に繊細に、時にダイナミックに紡がれていきます。
”tptの二大女優”とも言える佐藤オリエさんと麻実れいさんの姉妹が特に素晴らしく、色合いの違うハスキーボイスがぶつかり合うシーンは壮絶でありながらエレガント!満島ひかりさんの実弟・満島真之介さんのある種の天然振りや、中嶋しゅうさんが必死にうろたえる様子も面白い!このキャスト、そしてtptの色彩を受け継ぐこの演出だからこそ生まれた美意識と独特の世界観にヤラれました。コレは下手なカンパニーが上演したら目も当てられない……ある意味厄介な戯曲だなあ、と。
演出、翻訳&台本を担当した熊林さんと木内さんのコンビは来年も「演劇界の台風の目」になる予感大です。
『殺風景』 赤堀雅秋 作・演出 シアターコクーン
当初発表されていたリリースから一転し、九州の地方都市に生きるヤクザな家族が堕ちていく様子と、その父親が炭鉱で働いていた時代(平成16年&昭和38年~43年)とが交互に演じられる構成に。赤堀作品の特徴の1つである”ひりひりしたもどかしさ”が随所に織り込まれた本作で、とんでもない存在感を見せたのが主役の次男・稔と、父親・クニオの青年時代の二役を演じたHey!Say!JUMPの八乙女光さん。
西岡徳馬さん、キムラ緑子さん、荻野目慶子さんといったベテラン勢の中、全く引けを取らないガチの芝居で場をけん引していく姿はお昼の番組で売出し中のアイドルとは思えないほどでした。北九州の言葉が持つ何とも言えない強さと哀感も響き、決して明るくソフトな物語ではないのに二回転半して”希望”を強く感じたり。ダークな場面もあり好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、ガイド的にはツボでした。
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