日本の家はまだまだ狭い
不動産業界でいうグローバル化には二つの意味が含まれていると考える。ひとつは、アジアをはじめとする経済成長著しい国または都市において、開発ノウハウをいかし貢献すること。そしてもうひとつは、日本がアジアのヘッドクオーターになるための街づくりを推し進めることだ。不動産協会理事長を務める木村恵司氏(三菱地所会長)曰く、東京の国際化にあたっては「外国人の満足できる広い家が足りない」。観光目的の訪日客は順調に増えているが、住む、長期滞在するといった場合の受け皿づくりが急務だという。
統計(上図)で見れば、日本の賃貸住宅の平均面積は45.5平米。これはドイツ(78.1平米)やフランス(74.3平米)、イギリス(68.4平米)といった欧州先進国よりも低く、アメリカ(113.6平米)との比較においては半分にすら満たない(国土交通省ホームページより)。
付帯設備の必須は「ジム」
いち早く外国人向け住宅を展開してきた森ビルは「アークヒルズ仙石山レジデンス」(港区・2012年竣工)において最大400平米の住戸を設け、話題を呼んだ。「ヒルズ」シリーズはどの物件もゆとりの面積を確保している。住友不動産「ラ・トゥール」、「ホーマット」(現新日鉄興和不動産)なども同様のコンセプトを有する。こうした物件ラインナップのさらなる拡充が期待される。面積以外の条件は共用部に「ジム」が必須であること。マシンが並ぶ「ジム」は大規模マンションのみ、との認識はどうやら日本だけのようだ。例え総戸数十数戸でも、外国人向けに特化した高級賃貸マンションは必ずといっていいほど「ジム」を設けている。
物件視察で気付くことは、眺めの良い場所に設置されていることだ。ランニングマシンを大きなガラス窓の前におき、眺望を楽しみながら汗を流す。ストレス発散がオフ(プライベート)のテーマのひとつだとすれば、それが些細なことだと一蹴できない。快適な住宅を提供するには世界共通のセオリーがあることを認識しなければならないだろう。
ひとつ上のハイグレードは「多彩なアプローチ」
今年、賃貸市場で関心を集めた高級賃貸「虎ノ門ヒルズレジデンス」。地上200メートルの眺望やラグジュアリーな住空間が話題になったが、顧客から高く評価されているひとつが「多彩なアプローチ」である。通常、マンションの出入り口つまりエントランスは1か所か多くても2か所。ハイグレード仕様なら、その多くが地下駐車場から直接住戸フロアへつながる動線が確保されている。前述の「ホーマット」シリーズは前面道路からエントランス内側が見えないことで知られる。プライバシーは顧客にとって譲れない条件なのである。
「虎ノ門ヒルズレジデンス」は複合タワーの側面も併せ持つことから、住戸フロアへのアプローチが多彩。なかでも好評なのが「アンダーズ東京」内「AO SPA AND CLUB(アオ スパ&クラブ)」への動線。建物内であれば化粧なしに行けるメリットがある上に「虎ノ門ヒルズレジデンス」の場合は一旦1階へ降りる必要すらない。ここに他にはない利用価値がある。
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