ゆったりテンポの中に仕込まれたスゴ技
これまでコンテストで優勝した芸人やコンビを取り上げる際には、その勝因を自分なりに分析してきたんですが、今回ばかりは2ネタとも説明不要の圧倒的強さが発揮され、一切説明不要のようにも思いました。でもそれでは、真剣に見てないように思われかねないので(笑)、一点だけ。2本目の冒頭で華丸・大吉は、前のネタの「YouTuber」をもう一度持ち出してくるというツカミで、場内大爆笑をかっさらいました。あそこで優勝を確信した人は多かったと思いますが、それ以上に驚いたのが、あのツカミはあの場面でしか使えない、非常に貴重なテクニックだったってことです。
テレビ番組の中で2ネタ漫才をやる機会なんて、滅多にありません。そのうえ、緊張感あふれる舞台であることも重要な条件の一つです。ということは、この時までに一切客前で試すことのできなかった、おそらくブッツケ本番の大技だったのでは。他と比べると、肩の力が抜けた漫才のような評価もありましたが、実は冒頭からとんでもない大勝負を掛けていたんですね。
2人が漫才復活の鍵を握る
華丸・大吉の目指す漫才は、子どもからお年寄りまで楽しめて、誰も傷つけることのない「寅さん」のようなやり取りだと、事前VTRの中でも語られていました。確かに、漫才の中で華丸が演じる「博多のおじさん」は、親戚の集まりの中に必ず1人はいそうな親しみの持てるキャラクターです。1980年代は若者の観客に受ける漫才がブームを巻き起こしました。しかし少子高齢化が進んだ現代に再び漫才人気を復活させるには、幅広い層に受けるものが必要になってきます。今回の「THE MANZAIを機に、華丸・大吉のスタイルを取り入れる若手が増えれば、新たな形のマンザイブームが生まれることも、決して夢ではないと思うのですが。