マネジメント/マネジメント事例

ペヤング問題が一石を投じた企業のリスク管理とは(2ページ目)

カップ麺商品への虫混入で全製品回収と製造ライン無期限停止に追い込まれた、ペヤングブランドのまるか食品。事故発生に対する初動のまずさが指摘されています。今回の事故の発生と対応の問題点は、同社のリスク管理マネジメントの欠如にありそうです。この一件から見える企業の危機管理マネジメントのあり方を考えます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

今回のような食品工場での事故に関しては、中立的な管理セクションがリスク管理を担当し、現場と一体になって取り組む必要があるでしょう。これは、現場や管理部門が主導となることで効率化やローコスト・オペレーションを重視し、結果的に衛生面がおざなりになることを防ぐために重要です。三原則の一番目と二番目、日常的でかつ現場任せにしないという考え方はこのような手法の中で実現されていくのです。

解説

食品工場での衛生管理は最低限のリスク管理

三原則の三番目、「リスク管理はトップ自らが指揮するべし」とは、「リスク管理は組織マネジメント上、最重要課題のひとつであるべきだ」と読み替えられます。すなわち経営者は、リスク管理はひとつ間違えると経営の根幹すらも揺るがしかねない重要な問題であるという意識をもって、経営に取り組まなくてはいけないということなのです。

今回のケースでいうと、事件発生時に食の安全性を問われかねない問題であったにもかかわらず、詳細な調査も経ずに安易なコメントを発表してしまったまるか食品の経営姿勢には、「トップのリスク管理意識が希薄であったと」受け取られても仕方のない状況であったと言えるでしょう。


企業規模では測れないリスク管理責任の軽重

最後に、今回の件に関連して一部で「大手企業でもない会社が、大手企業並みのリスク管理責任を問われるのは酷ではないか」という、まるか食品に同情的な出ているようなので、その点についてもリスク管理の基本的考え方の観点からひと言申し添えたいと思います。

食品業界など自社製品が幅広く消費者に行きわたるようなビジネスにおいては、企業規模の大小に関係なく、自社製品の安全性の瑕疵が消費者に及ぼす影響力の大きさに応じてリスク管理要求度合いは高くなると理解すべきです。裏を返すなら、消費者になんらかのリスクを負わせる可能性があるようなリスク管理が甘い企業は、多数の消費者を相手にするようなビジネスには手を染めるべきではないということになるでしょう。

こう言った観点から今回のまるか食品の一件を眺めてみると、本件は単に一食品メーカーの管理不手際という問題にとどまらず、規模の大小を問わない企業のリスク管理マネジメントのあり方に一石を投じている問題でもあると言えるのです。
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