マネジメント/マネジメント事例

ペヤング問題が一石を投じた企業のリスク管理とは

カップ麺商品への虫混入で全製品回収と製造ライン無期限停止に追い込まれた、ペヤングブランドのまるか食品。事故発生に対する初動のまずさが指摘されています。今回の事故の発生と対応の問題点は、同社のリスク管理マネジメントの欠如にありそうです。この一件から見える企業の危機管理マネジメントのあり方を考えます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

露呈した「まるか食品」のリスク管理意識欠如

まるか食品のカップ麺への異物(虫)混入事故への対応で、もっとも問題ありとされているのは、事故発覚時に「製造工程上、考えられない」というコメントを即座に出したことでしょう。結果的にこのコメントは、保健所による立ち会い検査により「製造工程での混入は否定できない」とされてしまい、皮肉にも同社の食品製造における安全管理に対する認識の甘さを露呈することになってしまったのです。

解説

カップ焼きそばの老舗としてファンも多いペヤング商品

ここで2つのキーワードについて触れておきましょう。そのひとつが、企業の「リスク管理マネジメント」。発生の可能性がある事故や事件をリスクとして想定し、迅速かつ適切な対処をとるための心構えや準備を怠らないことを言います。もうひとつが「危機管理対応」で、そうしたリスクが実際に起きた場合の対応のことを指します。まるか食品のケースで言えば、安全管理に対する認識の甘さが露呈した理由は、「リスク管理」が出来ていなかったことに他ならず、結果として「危機管理対応」が誤ったものになってしまったということです。


企業におけるリスクとは何か

リスクとは、「企業の目的実現を阻害する不確実性」のことです。そしてリスク管理マネジメントは、そうしたものの存在を可能な限り多く把握し、さらにその発生と影響を最小限に抑えるための備えをすること、です。

まるか食品の場合、そのリスク管理の入口でごくごく初歩的な不確実性の把握すら怠っていたことは想像に難くありません。

なぜなら今回のカップ麺への異物混入は、主力製品を製造する工程の管理にかかわるリスクであり、こういった本業のリスクを見落としていた結果が、事件発生直後の「製造工程上、考えられない」というコメントにつながったと考えられるからです。


リスク管理は組織マネジメント上の最重要事項

企業のリスク管理マネジメントには、守られるべき三原則があります。

1.リスク管理は発生時だけでなく、発生前の日常からおこなうこと

2.リスク管理は、現場任せにしないこと

3.リスク管理はトップ自らが指揮すること

これらの三原則をしっかりと運用するためには、組織で規定や体制を整える必要があります。特にそうした組織の構築については、リスク管理部門を既存の現業部門や管理部門から切り離すことが肝要です。現場を収益や効率性だけの観点から管理するのではなく、リスク管理最優先の観点から管理、指導するべきだからです。

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