住みたい街 首都圏/住みたい街 関東 関連情報

「本」のある街に住みたい(2ページ目)

住むなら便利な街にとは誰しも思う。だが、生活の質を考えたら「本」のある街も良いと思う。その理由を、最近、目につき始めた本を媒介にしたコミュニティ作りのある街から見ていきたい。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド


我が家の1階を図書室として地域に開放、
街おこしに本のイベントを開催@国分寺市

西国図書室

元洋服屋さんだったという一戸建ての1階、変形な部屋を利用、図書室が開かれている(クリックで拡大)

自分が暮らす賃貸住宅の1階を私的な図書室「西国図書室」として地域に開放している人がいる。シェアハウスで出会い、結婚後に国分寺市に引っ越してきた篠原靖弘さんである。
開室するのは基本、篠原さんがお休みの日、日曜日午後のみ。置かれている本はご夫婦が持っていたものに加え、会員として図書室に関わる幅広い年代の利用者が持ち寄ったものである。

 

本籍表

持ち主が書いた本籍表。この本のどこが好きだったか、感想などが借りて読む人に伝えられる(クリックで拡大)

面白いのは単に本を貸し借りするだけではなく、その本を貸す人、借りた人の感想が本に添付された本籍表(貸す人用)、旅の記録(借りた人用)なる紙を通じて行き交うという仕組みである。実際に貸す人、借りた人が直接会うことがなかったとしても、互いになんとなく相手を意識しあうことになるわけだ。

オープンから2年余、会員は170人を超え、預かっている本は500冊を超えたという。確実に街の人が出会う場として認知されてきているのだ。

 

ブックイベント

イベントに先立ち、国分寺市では本を使った街づくりを考えるワークショップが開かれ、そこに参加した人たちがこの日のイベントに携わった(クリックで拡大)

さらに、この本を介して地域の人間関係を作るという活動は地域のイベント「ぶんぶんウォーク」参加を通じて広がりつつある。ぶんぶんウォークは言ってみれば街の文化祭で、11月の2日間、参加者は街をぶらぶら散歩しながら、市内のあちこちで開かれる大小60を超すイベントに参加するというもの。

篠原さんが企画した国分寺ブックタウンプロジェクトでは初日に市内で一箱古本市、2日には市のもとまち地域センターで一箱古本市、書評を戦わせるビブリオバトル、巨大原稿用紙に物語を書き続けていくワークショップ、絵本の料理を作って食べるイベントなどが行われた。

 

ビブリオバトル

自分が選んだ本について熱く語る5分間。子どもから大人まで年代、性別を超えた熱いバトルが繰り広げられた(クリックで拡大)

会場を訪れてみると、子どもから大人、高齢者まで幅広い年代の人が集まっており、並べられた本を覗いたり、マイクに向かって熱弁を奮ったり。市内でも駅から遠く、分かりにくい場所だったため、参加していた人数はそれほど多くはなかったものの、参加者の楽しそうな様子が印象的だった。

 
後日、他の参加者に感想を聞いてみたところ、こうしたイベントでは特定の年代の参加者が集まる傾向があるにも関わらず、ここではどの年代も万遍なく集まっており、本の持つ可能性を感じたとのこと。小学生も、シニアも自分の好きな本の話となれば同じように熱くなれ、年代を超えて友達になれるのである。

 

一箱古本市

一箱だけ売るなら一般の人もイベント的に参加でき、盛り上がれる。一箱古本市の成功の要因はそうした気軽さのようだ(クリックで拡大)

ちなみに一箱古本市とは地域の店先を借り、一人が一箱の古本を販売するというもの。2005年の谷根千での不忍ブックストリートに始まり、現在では日本全国で開かれるようになっており、街の賑わいに貢献している。2014年に記事で紹介した雑司ヶ谷でも書店と一箱古本市が活性化のきっかけとなった。詳細についてはこれを始めたライター・編集者の南陀楼綾繁さんの「一箱古本市の歩き方」(光文社新書)に詳しい。

 

続いて国立にある、参加する人が参加費を払って、本を提供し、さらには店番までするという面白い場所をご紹介しよう。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます