絵本

育児で発見する小さくて大きなこと『ねんねのうた』

小さな子どもの寝かしつけをしているうちに自然に生まれた『ねんねのうた』。小さな子を寝かせるというお世話の中で発見する、小さくて大きな発見。皆さんもきっとこんな発見を、日々重ねていることでしょう。読んでいると、ふっと力が抜けるような子守唄の絵本です。

執筆者:千葉 美奈子

 赤ちゃんのお世話をして初めて気づくこと『ねんねのうた』

育児の中で、かなり苦戦することも少なくない「寝かしつけ」。抱っこして背中をトントンして、立ち上がって歩き回ってゆらゆらと揺さぶってあげながら、「もう寝たかな」と、そうっと我が子の顔をのぞき込む……。ああ、寝ているなと思って布団に下ろすと泣かれて、また一からやり直し……。子どもが小さければ小さいほど1日の中でもこの作業の回数は多く、毎日毎日繰り返される根気が要る作業。「スムーズに寝てくれてこの時間がもっと短縮できれば、育児の負担もかなり減るのに」と思った経験がある方も多いと思います。

そんなふうに眠ることさえ自分1人の力ではできないような小さな子のお世話に追われる毎日だからこその発見が、絵本『ねんねのうた』の中にあります。



 


抱っこで感じる赤ちゃんの「わらい」

もう ねたかな
おめめは とっくに つぶっているけれど ほっぺとおくちが わらってる
ねんね ねんね ねんねしな
(中略)
おててと あんよが わらってる

育児に慣れないころは、目をつぶって脱力した様子だったら、完全に眠りに落ちたかなと思うもの。そしてそっと布団に下ろそうとすると、「ふぎゃあ」と抵抗されて、「ああ、まだ完全に眠っていなかったんだ」。その作業を繰り返すうちに、目はつぶっていても、体のどこかがまだ「わらってる」ことを感じられるようになっていきますよね。時には、体のすべてがねんねしているように見えても、心がまだ「わらって」いたようで、「下ろすには早かったか―」となってしまうこともありますね。

この子守唄は、作者が子育てをしていたころに自然に生まれたものだそう。きっと読者の中にも、寝かしつけをしているうちに生まれた自作の子守唄を持っている方がいるでしょう。


もどかしさも感じる育児の中で

スヤスヤ眠る子たち

何か夢を見ているかな?

私は初めての赤ちゃんのお世話に向き合ったころ、寝かしつけという作業が想像よりはるかに大変であることを知りました。当時はとにかく、ひたすら泣かれているような気持ちに包まれていたものです。しかし、生後1ヵ月健診で見かけたある光景は、私の育児生活の中でかなり大きな存在感を占め続けました。

健診の長い待ち時間を、小児科の待合室で赤ちゃんを抱っこしながら過ごしている時、1歳ぐらいの子を抱っこしてゆらゆらと体を揺すっているお母さんの姿がありました。子どもは既に目を閉じて脱力しているのに、ゆらゆらとリズムを取り続けるお母さん。その姿は、「寝かしつけ」をしているのではなく、小さな子と一体化しているようでした。かなり長いことその状態を続けていたお母さんが、その子をそっと待合室のベビーベッドに下ろしました。その子は、この絵本の最終ページに出てくるような子どもの表情と姿勢で、スヤスヤと眠り続けていました。

初めての育児には分からないことばかりで、「寝かしつけってこんな感じでするのか」と新鮮な思いで眺めた光景。その後、少しずつ少しずつ、赤ちゃんや小さな子が発するサインを感じることができるようになっていったような気がします。

心にも時間にも余裕があるときには、寝かしつけに限らず、育児全般においてそんな風にゆったり向き合うことができますが、実際はそうはいかないことも多いもの。そんなもどかしさも時には感じながら小さなお子さんのお世話をしている方々に、この絵本が、ふっと力を抜くきっかけになってもらえたらいいなと思います。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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