憂さ晴らしに始めた
ガイド:2012年にミニアルバム『tourist in the room』をリリースされました。長い間、音楽活動にはブランクがあったのですよね。どうして、音楽を作り始める気になったのですか?
tourist in the room
Sayoko:
高校卒業するちょっと前にミュージシャンになるという夢を諦めて、そのまま音楽も作らなくなりました。その後はわりと早く結婚してぼんやり暮らしてまして。ある日、それまでの自分を完全に否定される出来事があり、何もかも嫌になってしまったんです。でもいつまでもふさぎ込んでても仕方ないので、「何か楽しいことをしよう」というわけでパソコンとかDAWソフトとかを買いました。抱えきれなくなった感情を音楽で表現したくて…と言うとなんかカッコいいですけど、要は憂さ晴らしだったんです(笑)。
ガイド:
オープニングの「Hangetsu-No-Machi(半月の街)」を聴いていると、80年代後半的テクノポップでもあり、ちょっとフレンチなウィスパー・ボイスに反応してしまいます。この辺りも、Sayokoさんのルーツなんでしょうか?
半月の街 (demo) (SoundCloud)
Sayoko:
「半月の街」は、「パラレリズム」の頃のコシミハルみたいなテクノポップがやりたくて作りました。ほとんどパロディに近い気持ちでしたね(笑)。なんとなくウィスパー気味に歌ってみたらなかなかうまくハマったし、この曲がきっかけでCD買った!と言ってくださる方も多くて、嬉しいです。
暗い物語を描いてみよう
ガイド:翌年、2013年に発表された2枚目『Need them but fear them』からは、より耽美的な世界に入っていきますね。それはおどろおどろしいものではなく、不思議の世界に紛れ込んだ感じなんですが…「incubus」に始まり、琴線に触れるタイトル曲まで、ひとつの世界観で綴られています。この時期、耽美的な気分だったのでしょうか?
Need them but fear them
Need them but fear them (demo) (SoundCloud)
Sayoko:
これを作ってたときは、超ナーバスでした。『tourist~』で自分なりにやりたいことをやりきった感じがあって、次にどんなものを作っていいかわからなくなって。それならいっそ、その不安や迷いを思いっきり表に出して、暗い物語を描いてみようと思いました。ラストに収録したタイトル曲の終盤では、音楽と向き合ううちに少し光が差してきた自分の心を表現しています。