住宅取得する人自身が事実と数字を把握しよう
記事の結論から言いますと、消費税8%増税は住宅市場、とくに注文戸建分野に影響をもたらしました。だから「買い時」「買い時でない」とも言うつもりはありません。これからの住宅取得者の方には事実と数字とトレンドを知っていただき、そのうえで自分たちの人生計画に必要か、必要なら何をどう買うかを判断いただきたいと思います。こうした趣旨でお読みいただければ幸いです。新設着工戸数(2014年10月)への寄与度は持家が大きく減った(資料提供:以下いずれも住宅金融支援機構)
持家反動減、回復に遅れ
今秋に大手各社から発表された決算概要に共通するのは2つ。第1は、主力の注文戸建とリフォームに売上ベースで前年比1-2割程度の反動減があったこと。第2は、相続税改正を前にした賃貸(アパート)建築が2-3割増と好調なこと。結果、好調な賃貸建築が戸建の売上減をカバーし、加えて販管費などの各種コスト削減努力で粗利益や純利益はそこまでの減にはならなかった企業が多くありました。しかし、資材の高騰や東京オリンピックを前にした人件費などの労務費高騰があり、コストは上がることはあっても下がることはない気配。このため、あくまで推測ではありますが、住宅企業の更なる価格努力はこれ以上厳しいとも考えられるため、住宅価格(注文戸建)も高めで推移することが予想されます。したがい、10%増税が延期された今は、8%に上った後ではありますが、高め推移する価格に2%の差が出るわけですから、1つの買い時とみることができるでしょう。
97年時よりは底打ち早い?
決算で説明した各社首脳陣は「今回の消費税は前回(3→5%)の引上げ時よりも住宅展示場にお客さんが戻ってくるのが遅い」「物価高やマスコミの景気情報もあって、いつも以上に消費マインドが冷え込んでいる」「戸建は消費税の反動減以上に、人口減による中長期にダウントレンドにあるため想定内ではある」と様々な見解を示しました。鉄鋼や陶磁器、砂利などの建築資材が価格上昇。
国土交通省「住宅着工統計」によると、2014年10月の新設住宅着工戸数は前年同月比-12.3%で、8か月連続でマイナス。利用関係別では持ち家-28.6%、貸家-4.1%、分譲戸建て等-13.7%となりました。特に持家の反動減が大きくなりました。
ただ、1997年の5%増税時ほどの落ち込みにはなっていない模様。97年4月引上げ時は、同年7月から年後半にかけてアジア通貨危機が起こり、金融不安が広がりました。このため、消費税+金融不安でマインドが大きく収縮し、前年96年に比べてマイナス25.2%となりました。今回2014年は前年比マイナス14.3%にとどまり、かつ今年夏頃から若干底を打っているとのこと。「ただし、この底打ちは今後上昇するというものでなく、下げ止まりとみたほうがいい」(機構関係者)
次回はその厳しさの要因と、今が買い時かどうかの度合について紹介したいと思います。