上原理生 86年生まれ、埼玉出身。東京藝術大学声楽科卒業。在学中からオペラやオペレッタに出演、卒業時に東京藝術大学同声会賞・アカンサス賞受賞。11年に『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役でミュージカル・デビュー。以降『ロミオ&ジュリエット』ティボルト、『ミス・サイゴン』ジョン等で活躍。声楽家としても精力的に活動。(C)Marino Matsushima
ミュージカル史に燦然と輝く『ヘアー』の作曲家ガルト・マクダーモットが1971年、シェイクスピアの初期の喜劇をミュージカル化した『ヴェローナのニ紳士』。トニー賞では作品賞等に輝きながら、その後はあまり上演されず、日本でも75年に『ヴェローナの恋人たち』のタイトルで劇団四季が上演したのみだったこの“幻の名作”が、ついに宮本亜門さんの演出で復活します。
モチーフこそシェイクスピアですが、ロックにポップス、そしてラテンのリズムで彩られた楽曲は軽快でノリが良く、若者たちの恋の狂騒曲は奇想天外に展開。西川貴教さん、堂珍嘉邦さんら名うてのシンガーがキャストに名を連ねる中で、一人異彩を放っているのがこの人、上原理生さん。2幕に唐突に現れてヒロインの一人、シルヴィアと駆け落ちした挙句、主人公たちと戦うという謎のキャラクター、エグラモーを演じます。目の前に現れた上原さんは声楽家でもあり、おっとりとノーブルなたたずまいの青年なのですが、この方が本当にエグラモーに? 半信半疑のまま、インタビューは始まりました。
シェイクスピア×ラテン音楽×宮本亜門が生み出す、クレイジーで最高にハッピーな群像劇
――『ヴェローナのニ紳士』は「レア」と言いますか、これまであまり上演されてこなかった作品ですが、なぜ今、本作を上演するのかということについて、何かうかがっていらっしゃいますか?
「演出の(宮本)亜門さんがこの作品の作者たちとお知り合いということもあって、ずっとやりたい作品だったそうです。シェイクスピアの戯曲という原作はあるけれど、その通りではなくその時々の時事性も盛り込んだり、ラテンのノリで役者たちが自ら演奏したり踊りだしたりと客席にアピールするものがものすごく面白く、いろいろな愛が描かれる中で人間たちが一生懸命に生きている姿に感銘を受けたそうです。
ブロードウェイで書かれた当時はベトナム戦争のただなかという時節柄、ヒッピーの人たちが登場したり、他のシェイクスピア作品の台詞を引用したりという演出がすごくお客さんたちに受けたそうで、今回も、”今の日本“を取り入れてやりたい、クレイジーに、でも本質の部分はがつんとお客さんに届けられる舞台にしたいねと亜門さんはずっとおっしゃっています」
――今の日本を取り入れるというと、例えば?
「時事ネタで、”ちょっとあいつ危険なドラッグ吸ってるぞ“みたいな(笑)。稽古ではみんなで”ここはこうやろうか?”と言いながらいろんなことを試しているんですが、それに対して亜門さんがアイディアを出したり。台詞の変更も出てくるし、”ここに楽器を入れてやってみよう“とか、皆で一つ一つ作り上げているという感じですね」
*次ページで上原さん演じるエグラモー役について、とくとうかがいます!*