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『Documentary of AKB48』監督、震災と作品を語る

「AKB48は知らないけどこのシリーズだけは見る」という映画ファンがいるほど高い人気を誇る『Documentary of AKB48』シリーズ。2作目以降の監督を務める高橋栄樹監督がトークイベントに出演。震災との関わりなど普段見れない角度から語ってくれました。

大坪 ケムタ

執筆者:大坪 ケムタ

アイドル・タレントガイド

震災について商業的でない形で一度出したかった 

総選挙や組閣といったイベントだけでなく数々の事件の裏側を見せてAKB48ファン以外からも高く評価されている映画『Documentary of AKB48』シリーズ。2作目以降の監督であり、AKB48のMVも多く監督されている高橋栄樹氏が11月21日に行われたトークイベントで『Documentary of AKB48』をはじめとした自作についてたっぷり語りました。
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『Documentary of AKB48』シリーズの監督として知られる高橋栄樹監督。先日続編の2016年の公開も発表されました。

監督が出演したのは作品や創作を通して東日本大震災とアートの関係を考察するプログラム『Moving Distance√9-1 - 光の気配』の中で行われた、『3.11以後の<映画>-Documentary of AKB48、afterのその後』と題されたトークイベント。その中で主に語られたのが『Documentary of AKB48』と、朗読に元AKB48の仲谷明香を起用して制作された『after』について。

最初に自らのプロフィールを語りつつ、MVや映画以前のビデオアート作品について触れた高橋監督。今回のプログラムはシリーズで行われており、2月に行われた『Moving Distance:2579枚の写真と11通の手紙』で公開されたのが高橋監督による映像『after』です。岩手県山元町で行われている、震災で流された写真を洗浄し持ち主に返却する試み『思い出サルベージ』。その中でもダメージが大きく持ち主が見当たらない写真を展示して寄付金を集める試み「Lost&Found Project」の写真、それに高橋監督の映像、和合亮一の詩、仲谷明香の朗読が重なりあう作品です。

「震災については商業的でない形で一度出したかったんです。映像は山元町で撮影したんですが、自分が撮るといかにも『被災地を撮りました』という映像にしかならない。それで防水機能がついてる子供用カメラを子供から借りて、わざとぶらぶらさせたり、波にぶつけたり撮影させたことで個人的な視線でありつつ、人為的でない映像が撮れたと思います」

また仲谷明香の起用について「声が素晴らしい。あと彼女も岩手出身だから。”泣き”を入れたいところだと思うんですが、映像に合わせて淡々と読んでもらい、プロの仕事をしてもらった」と高く評価。映画と違ってなかなか見る機会のない作品ですが、一度ぜひ見てほしい作品です。

アイドルも震災について語らないわけにはいかない

そして話は『Documentary of AKB48』に。それも話は今回のテーマもあって、東日本大震災が起きた年であり、AKB48の被災地支援活動が始まった年を描く『Documentary of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る。』が中心に。

「プロデューサー達からは、『楽しいのは6割か7割、悲しいのは3ね』と言われたんですけど、逆になってしまった(笑)。でも、2011年を描く時に震災は外せないし、アイドルもそれについて語らないわけにはいかない。一番入れたかったシーンは、自衛隊とAKB48のメンバーがひとつの画面に映るシーン。あれが最も非常事態ということを印象づける場面だから」

「描きたかったのはこの年、巨大な震災もあったけど、メンバーそれぞれにスキャンダルやライブでの失敗といったそれぞれの大きな事件もあった。いわば『内なる震災』というか。もちろん実際の震災とは比較にならないけれど、それぞれ本人にとっては大事な事で。そこからどう再生していくか、出来事を反芻して考えることが大事だと思う。実際の震災を考える上でも、内なる震災を考える上でも」


また今年公開された『DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?』にも話は及び、その中で取り上げられた岩手での握手会中に起きた傷害事件についても語られました。

「事件が起きてから公開まで時間がないというのもあるし(事件は5月25日、上映は7月4日)、審議に入ってある程度事件についてわかるまでは何も入れない方がいいんじゃないかとも思いました。ただ、事件が東北で起きたということで、それまで被災地支援活動を行ってきた東北の各地区の人たちから寄せ書きが多く集まったんです。岩手で起きた事件に対して、東北の人たちがカバーしてくれたんですね。それは触れておきたいと思ったんです」

さらに話題は同じく高橋監督による映画『パンドラ ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』にも。98年4月から99年3月にかけての1年間で113本ものステージを行った過酷なツアーに帯同し撮影されたものの、諸事情で公開されなかった映像が2013年になり追加撮影込で上映されたといういわくつきの作品で、「ずっとお蔵になってたけど、『Documentary~』を撮ることで再び手がけられて、決着をつけられた。ある意味、『Documentary~』の続編といっていい作品です」と、AKB48ファンも見る気にさせる発言も。

イベントはファンからの質疑応答も長い時間取られ、濃厚な内容を楽しませてもらいました。来年にはAKB48だけでなくSKE48、NMB48、HKT48版も公開(高橋監督が手がけるかは未定)される『DOCUMENTARY of AKB48』。例年のAKB48に比べると、大島優子卒業以降はサプライズがちょっと少なめな気がしますが、多くても少なくてもドキュメンタリーになった時、高橋監督がどんな光景を見せてくれるかが楽しみです。そしてAKB48を通して東北を思う--そういう役割を果たせたら素敵だなと思いますね。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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