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知らなきゃ損する「働く人の賃金」(2ページ目)

「残業代の正確な計算方法を知っていますか?」働く人にとってお給料は大切な労働の対価ですが、すべて会社任せにしている方も多いはず。自分が「損しない」ように、労働基準法で賃金の基本原則を学びましょう。「はじめての労働基準法」第3回です。

長友 秀樹

執筆者:長友 秀樹

社会保険労務士試験ガイド

割増賃金

時間外、深夜(午後10時~午前5時)に働かせた場合は、1時間あたりの賃金の2割5分以上、法定休日に労働させた場合には、1時間あたりの賃金の3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

【割増賃金の計算式】月給制の場合
▽割増賃金=月給額/1ヶ月の所定労働時間数×1.25(または1.35)*
*時間外・休日労働が深夜時間に及ぶ場合は、それぞれの割増率に0.25を加算

割増賃金の算定基礎となる賃金(上記計算式の月給額)からは、下記のものは除外することができます。この規定は限定列挙式とされていますので、下記以外の手当は認められていません。
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われた賃金
それでは、上記名称の手当であれば何でも割増賃金の算定基礎から除外できるかというと、そうではないので注意が必要です。これらは名称ではなく、実質により判断されるからです。

例えば、下記の例に該当しない場合は、割増賃金の算定基礎対象となる可能性があります(実際に該当するかどうかは労働基準監督署などで確認しましょう)。
(例1)家族手当
・扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当
(例2)住宅手当
・住宅に要する費用に応じて算定(費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くすること)される手当
(例3)通勤手当
・一定額までは距離にかかわらず一律に支給するようなものでなく、実費相当分を支給する手当

労働時間、休憩、休日の適用除外

皆様の会社でも、例えば課長職以上の方は管理職だから残業代の支給対象外である、といった扱いになっていませんか?

これは、労働基準法第41条で定める「労働時間、休憩、休日の適用除外」規定に根拠(下記(2)の管理監督者)があります。この規定には、他にも次のような方が該当します(ただし、深夜業、年次有給休暇に関する規定の適用はあります)。
(1)農業又は水産業等の事業に従事する者
(2)管理監督者、機密の事務を取り扱う者
(3)監視又は断続的労働に従事する者
(4)宿日直勤務者

しかし、「どの会社でも、課長職以上の人は労働基準法上の管理監督者だから残業代は支払わなくてもよい」と考えるのは早計です。
管理職の位置付けなどは、会社ごとに異なるもので、それが労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかの判断は、名称にとらわれず実態で判断されるからです。

管理監督者に該当するかどうかは、厚生労働省の通達では「部長、工場長等労働条件その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と示していますが、具体的には過去の判例などから主に次の3つの要素に留意して判断されています。

【管理監督者に関する3要素】
(1)職務内容、責任と権限
決裁や人事(採用・評価等)、勤怠などの権限をどの程度与えられているか など
(2)勤務態様
出退勤が本人の裁量に任されているか、遅刻・早退時に賃金を控除されていない など
(3)賃金等の待遇面
賃金が役職手当や賞与などにより一般職の水準と一定の較差がある など

終わりに

賃金については、いわゆる「サービス残業」に対して適正に残業代が支払われていない、などとして、労働基準監督署の調査が厳しく行われるようになっています。

また、最後に取り上げた管理監督者の適用除外についても、「名ばかり管理職」の問題が注目されています。会社で管理職として残業代の対象外になっているものの、実際には権限が小さかったり相応の待遇を受けておらず、残業代が支払われなければならないケースで、有名になった裁判もあります。
最近の社労士試験では、単純な条文だけを問うだけはなく、行政の通達や裁判例なども出題されることが増えていますので、幅広く学習しておきましょう。

次回は、知ってますか?あなたの会社の「有給休暇と就業規則」を解説します。
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