様々な命の輝き方を描く『さいごの一葉』
オー・ヘンリーの短編の傑作『最後の一葉』。喜びと切なさに同時に包まれるストーリーに、子どものころに出会ってハッと心を打たれた経験を持つ方もいらっしゃると思います。そのお話が、いもとようこさんの文と絵によって、親しみやすい絵本『さいごの一葉』として誕生しました。いずれ散っていく運命にありながら、限られた期間、鮮やかな赤で見る人の心を打つ晩秋のつたの葉。お話では、病床の女性ジョアンナ、絵が売れずにやけっぱちになっていた画家のベアモンさん、そしてつたの葉、それぞれが全く異なる形で命の輝きを訴えかけます。
散りゆく葉に余命を重ねた女性と、彼女を救いたいと願った老画家
芸術家が集まるワシントンのとある町で、画家を目指して日々絵を描き続ける2人の女性。その1人、ジョアンナが、ある秋に重い肺炎を患いました。死んでしまうことばかりを考えるジョアンナは、窓の外を見ながら多い方から少ない方に数を数えます。3日前には100枚もあった真っ赤なつたの葉がどんどん散り去ってあっという間に残り少なくなったことに、自分の命の終わりの近づきを重ねているのです。共に絵を描き続けてきたスーがどんなに励ましても聞く耳を持たず、お医者さんもあきらめ顔。スーは2人が住んでいた下の部屋の画家のベアモンさんというおじいさんにジョアンナのことを話しにいきますが、長年絵が売れず酒浸りの日々を送っているベアモンさんは、つたの葉に自分の死を重ねるジョアンナのことを一笑に付します。しかし、そのベアモンさんが取った画家としての行動が、ジョアンナに生きる気力を吹き込みます。やがて再び出会った時に
私も子どもの頃どこかで出会ったお話。読み終わった時には複雑な気持ちになったことをうっすら覚えています。輝きを取り戻した命と、消えていった命、そして、本物ではないけれど病床の女性に生きる気力を復活させた、ベアモンさんの最後の傑作。小学校中~高学年の子たちがこの絵本に出会った時に、生と死を同時に訴えかけるお話を、どのような形で受け止めるかも様々だと思います。そして、いずれ原作をどこかで見かける機会があれば、きっと手にしてお話をたどりなおすのではないかとも思います。
いもとようこさんのとても分かりやすい文と、鮮やかな赤で強い存在感を放つ1枚のつたの葉の絵。絵本で名作に触れる体験は、決してイメージを固定するものではなく、やがて成長して出会った時に、かつてとは違うイメージや感じ方を発見することにつながるのではないかと感じます。