不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

地役権と要役地、承役地

住宅の敷地に地役権が設定されている場合もありますが、これらの意味や違いをよく理解しておかないと思わぬトラブルに巻き込まれかねません。地役権とそれに伴う要役地および承役地の規定について、知っておきたいポイントをまとめました。(2017年改訂版、初出:2014年11月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.059】

通行地役権の概要

通行地役権の例。道路に接していない敷地の囲繞地通行権とは異なる


土地に関する権利のなかに「地役権」(ちえきけん)というものがあります。これに「要役地」(ようえきち)、「承役地」(しょうえきち)という用語も絡むため、なかなか分かりづらい面もあるでしょう。

地役権とは、一定の目的のために「他人の土地を利用する物権」として民法に定められているもので、それによって利用価値が高まる自己の土地が「要役地」であり、利用される側の他人の土地が「承役地」です。

地役権は原則として当事者同士の契約にもとづき自由に設定することができるものの、「承役地の利用によって要役地の利用価値が客観的に高まるもの」でなければならず、また、公序良俗に反する地役権も認められません。

なお、承役地の所有者や借地人は、地役義務(土地を他人に使わせる義務や妨害をしない義務など)を負いますが、その対価としての賃料発生は地役権の要件となっていないため、無償か有償かはあくまでも契約によります。

古くから用いられている地役権としては、「通行地役権」や「用水地役権」などが代表的なものですが、送電線下の土地の建築を制限する「送電線地役権」、さらに最近では、眺望や日照を確保するために他の土地へ高い建物が建たないようにする地役権なども使われています。

また、要役地と承役地が隣接している必要はなく、その目的によっては離れた土地の間で地役権が設定されていることもあるでしょう。

要役地の権利は所有権に付随するため、これを分離して処分することはできず、要役地の売買によって所有権が移転すれば地役権も同様に買主へ移転します。その一方で、地役権を第三者に対抗(権利を主張)するためには登記が必要とされています。

ところが、住宅地などでもみられる「通行地役権」では、登記がされていないケースのほうが多いほか、地役権設定契約がないままで「黙示的設定」とみなされていることもあります。

そのため、とくに承役地が売買されたときに、地役権者(要役地所有者)と承役地取得者との間で紛争になることが多く、裁判になることも少なくありません。

住宅購入の際にはそのような事態へ巻き込まれないように、不動産業者にしっかりと事前調査をしてもらうことはもちろんですが、敷地に面して隣地へ出入りできる扉があったり敷地の一部が通路状になっていたりするなど、不自然な点がないかにも十分に注意しましょう。

地役権のある土地(要役地)を購入しようとする場合でも、売主から「隣の土地は通ってもよいことになっている」などといった説明だけで納得せず、契約書や登記を確認することや、登記がない場合にはそれを求めるなどの対策も考えたいものです。


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登記事項証明書(登記簿謄本)の見方
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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