世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ジェロニモス修道院とベレンの塔/ポルトガル(2ページ目)

辺境の小国にすぎなかったポルトガルだが、エンリケ航海王子による大西洋開拓に成功し、ヴァスコ・ダ・ガマらの活躍によってブラジルから日本に至る海上帝国を成立させる。このふたりの偉業を称え、世界中からもたらされる富を背景に建立されたのがジェロニモス修道院とベレンの塔だ。今回はポルトガルの象徴である世界遺産「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

「テージョ川の貴婦人」ベレンの塔

ベレンの塔

空の青と白大理石が見事に調和したベレンの塔。正式名称はサン・ヴィセンテ砦。ジェロニモス修道院の南西約1kmにある。塔の高さは32m

ベレンの塔の堡塁

ベレンの塔の堡塁。放射状に窓が取り付けられており、大砲が備え付けられている

繊細な彫刻で覆われているのはベレンの塔も同じ。白い塔は海と空の青によく映えて、司馬遼太郎が「テージョ川の貴婦人」と称したほど。

もともとこの塔はベレンの港を守る監視砦として建てられたもので、ヴァスコ・ダ・ガマをはじめ多くの航海士たちがここから旅立った。堡塁の2階部分にはぐるりと放射状に砲台が備え付けられており、テージョ川と9km先に広がる大西洋に睨みを利かせている。

 
ベレンの塔から堡塁を見下ろす

ベレンの塔。塔から堡塁を見下ろす

満潮時には塔の周りを汽水(海水と淡水が混じり合ったもの)が覆う。実は堡塁の地下1階に水を引き入れることができ、一時は水牢として政治犯を収容していた。

白い塔が夕陽に焼ける様はなんとも美しく、太陽が沈んだあと、ほの暗い海に浮かび上がるライトアップされた塔の姿もロマンチック。

塔の周辺は公園として開放されているので、地元の人々もしばしばピクニックに訪れる。世界遺産の側で海と川を眺めながらゆったりとした時間を過ごせるとてもぜいたくな空間だ。

 

新観光名所「発見のモニュメント」

発見のモニュメント

船の形を象った発見のモニュメント。その下の波紋はリスボン市内やマラッカなどでよく見かけるポルトガルの象徴的な紋様だ

発見のモニュメント、東面

発見のモニュメント、東面。先頭(いちばん左)に立っているのがエンリケ航海王子だ

世界遺産には含まれていないが、1960年に作られた新しい観光名所「発見のモニュメント」も紹介しておこう。

ジェロニモス修道院の南500m、ベレンの塔の東約1kmにある記念碑で、帆船をイメージした高さ52mの碑に海上帝国ポルトガルを支えた英雄たちが描かれている。

碑の先頭を飾っているのがエンリケ航海王子。そして東面にバルトロメウ・ディアスやヴァスコ・ダ・ガマ、カブラル、マゼラン、フランシスコ・ザビエルら16名、西面に詩人ルイス・デ・カモンイスら15名、計32名の像が彫られている。

 

パステル・デ・ナタ

ポルトガルのエッグタルト、パステル・デ・ナタ。パステル・デ・ベレンのこの菓子は、ジェロニモス修道院の修道士たちから伝わった秘伝のレシピを守り続けているという ©Jpatokal

内部はリスボンの歴史を紹介する博物館となっており、上階からリスボンを一望することができる。川と港、庭園、公園に囲まれたジェロニモス修道院-ベレンの塔-発見のモニュメントはオススメの散歩コース。

近くにはリスボン名物・エッグタルト(パステル・デ・ナタ)の名店、パステル・デ・ベレンもある。ジェロニモス修道院の修道女たちが発明したというこのお菓子を買い込んで、ゆったりとした時間を過ごしてほしい。

 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます