REITに近い仕組みのMLP
MLPとは聞き慣れない言葉ですが「マスター・リミテッド・パートナーシップ」の略称のことで、米国の証券取引所に上場しており、株式と同様に売買が行われています。MLPは、主に北米で天然ガスや石油のインフラ(パイプライン、貯蔵施設など)を展開する事業体で、一部にはシェールガス事業が含まれているものもあります。MLP自体は10年以上前から存在していますが、2014年6月末現在の全銘柄の時価総額は約42兆円(4236億ドル)に達しています。エネルギー事業と言うと、採掘などで一発当てるというイメージが強いのですが、MLPの投資先は精製や輸送などのエネルギー事業の安定した川中部分が中心になります。
MLPでは、投資家から集めた資金でエネルギー事業に投資し、収益のほぼ全額を投資家に分配することから、エネルギー版のREITと形容されています。足元、配当利回りは低下しているものの、それでも5.0%前後と言われており、米国REITの3.5%前後より高い利回りとなっています。
純資産総額を急増しているファンドも
エネルギー関連株、シェールガス株などの名称のファンドにも、一部MLPを組み入れて運用されているかもしれませんが、明確に商品名に「MLP」が入っているファンドでは、国際投信投資顧問が運用する「米国エネルギーMLPオープン(毎月決算型)」が2013年6月と相対的に運用履歴が長いファンド。同ファンドを見ていくことにしましょう。同ファンドは、2014年6月初旬には約260億円であった純資産総額が、10月29日には約1596億円と約5ヵ月で6倍に急増しています(為替ヘッジなしタイプ)。9月末基準のマンスリーレポートによれば、過去6ヵ月の騰落率は20.5%、同1年では33.2%と良好な運用成績となっています。
余談ですが同ファンド、投資資金の流入が急増したことにより2014年10月30日から11月12日まで、為替ヘッジなし、為替ヘッジありタイプ共に購入申し込みを一時停止することを発表しています(10月28日発表)。
2013年10月から1万口あたり30円の分配金が支払われていますが、運用成績が良好なことから2014年6月には800円、9月には1000円という高額な分配金が支払われています。
組み入れているMLPの価格が上昇したため、配当利回りは2014年4月決算期の5.6%から4.5%に低下していますが、毎月の分配金(30円)は全額MLPからの分配金で賄われています。また、高額分配の原資はMLPの売却益等と考えられることから、健全に運用が行われているようです。
実質的な運用管理費用(信託報酬)が2.0864%(税込み)程度とやや高いと懸念する投資家には、日興アセットマネジメントが2014年2月に「インデックスファンドMLP(毎月分配型)」を設定しています。運用管理費用は0.81%で、毎月の分配金は1万口当たり30円が支払われています。
米国では、MLPはこれまで個人投資家などのリテールが主体の投資商品でしたが、その利回りに着目して州の年金ファンド、投資ファンドなどの機関投資家も注目しています。2014年に入って毎月のように新規設定が行われているMLPファンド。どこまで投資家の人気を集めるのか、また新規設定が増えるのか気になる存在と言えるでしょう。