不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

盛土と切土の注意点

傾斜地を造成した宅地では盛土部分と切土部分が生じ、地盤の強度に影響することがあります。不同沈下や大地震による崩壊なども懸念されるため、土地の成り立ちにも十分な注意が欠かせません。盛土と切土とは何か、知っておきましょう。(初出:2014年10月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.057】

盛土と切土とは

 
盛土と切土の関係

傾斜地を造成したときには盛土部分と切土部分が生じる


国内の住宅地はもともと平坦なところばかりではなく、傾斜地を造成した宅地も数多く存在しています。そこで知っておきたいのは、盛土(もりど)と切土(きりど)です。

その言葉からも分かるとおり、盛土は元の地盤面に土砂を盛り上げたものであり、転圧(締め固め)や地盤改良工事が不十分な場合には軟弱地盤になりかねません。

それに対して切土は元の地盤が残るため、比較的安定しているといえるでしょう。

また、上の図の「宅地B」は一つの宅地の中に盛土部分と切土部分が混在し、地盤の強度が異なることによって不同沈下の原因となることがあります。

新しく盛土された地盤は3年から5年程度で沈下や圧縮が落ち着くとされていますが、盛土の内部にコンクリート片や廃棄物、大きな石あるいは木の根などの混入があるときは、空洞ができたり木の腐植が進んだりすることによって、10年近く経たないと安定しないこともあるようです。

さらに、擁壁から1メートル以内くらいの部分は転圧不足になりがちで、部分的な地盤強度不足が生じることもあります。とくに造成から間もない時期に分譲される宅地では、十分に注意しなければなりません。

過去に私自身が売買に関わった土地でも、擁壁に近い部分で陥没が生じたケースが2件ありました。いずれも分譲主は大手で、かつ引き渡し前に問題が発覚したため、買主に実質的な損害はありませんでしたが……。

また、盛土は傾斜地だけでなく、水田や湿地などの埋立地や谷埋め盛土地などもあります。とくに大規模な谷埋め盛土地は、大地震などにより数十戸単位で崩れて流れることがあるため十分な注意が必要です。年数を経た傾斜地の盛土でも、大地震によって崩れることがあるでしょう。

国土交通省の「大規模盛土造成地マップの公表状況について」というページには、調査資料などをweb上で公表している自治体へのリンクが掲載されていますが、2013年5月現在で12県市にとどまり、情報開示や調査そのものの遅れが目立ちます。

該当する地域ならしっかりと確認しておきたいものですが、公表されているのはほとんどが一定規模以上の造成地だけであり、小規模なものまで含めて公表しているのは仙台市だけです。

盛土や切土によって地盤面に高低差が生じた造成地、あるいは過去の埋め立てなどが考えられる造成地の住宅や土地購入を検討する際には、売主業者または仲介業者に対して造成工事に関する図面の提示や説明を求めてください。

ただし、工事年代が古い場合などは不動産業者による調査で関係資料を入手できないこともあります。地盤強度が気になる土地の場合には、専門家による調査を依頼することや、地盤補強工事費用を見込んでおくことなども考えなければなりません。


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