『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』
上演中~15年2月1日=電通四季劇場「海」『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』
年末年始、舞台ファンに嬉しい演目が登場しました。劇団四季が今年一年への感謝の気持ちを込めて、今年、来年の演目を中心に名曲を新演出で歌い踊る『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』。ヴォーカル・パート、ダンス・パートともに男女数名ずつの精鋭メンバーが、加藤敬二さん振付のナンバーを披露してゆく形式は『ソング&ダンス』シリーズと同じですが、今回は来年の新作『アラジン』を、出演候補俳優も参加して紹介している点で、さらにわくわく感の募る内容となっています。シャープに、優雅に、エネルギッシュにと自在に踊り分ける俳優たちのダンス・テクニックを観るだけでも刺激的な舞台。劇団四季の豊富なレパートリーも体感でき、四季初心者の方々にもお勧めしたい作品です。
【観劇ミニ・レポート】
『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:荒井健
アースラのタコ足を背景のいばらのような映像で想起させ、姉たちの消えてゆく過程を様々な趣向で見せる「パパのかわいい天使」(『リトル・マーメイド』)など、曲の骨子は据え置きながら、ちょっとしたアレンジで全く別の顔を見せるナンバーが続くいっぽう、『オペラ座の怪人』の「ハンニバル」「スィンク・オブ・ミー」(順に吉田さん、山本さんが素晴らしい歌唱)等、歌ありきのナンバーはオリジナルに近い演出で登場。ファン心理をふまえた、心憎い演出です。個人的には、青空の広がるシンプルな舞台で、女性コーラスとともに上川さんが“新たな世界へ踏み出してゆこう”と歌う「エニイ・ドリーム・ウィル・ドゥ」(『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリーム・コート』)が爽やか。まだ日本人キャストでは演じられたことのないロイド=ウェバー&ティム・ライスの初期作品ですが、もともと学校演劇用に作られた、親しみやすい曲ばかりの作品。ぜひ劇団四季で上演してほしいものです。
「劇団四季FESTIVAL!扉の向こうへ』撮影:荒井健
『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:荒井健
『ソング&ダンス』でもお馴染みの、スーツ&ステッキ姿の面々がスタイリッシュに魅せる「ビー・アワ・ゲスト」(『美女と野獣』)で盛大なるエンディング…と思ったら、カーテンコールの後に一人また一人と現れ、力強い「サークル・オブ・ライフ」(『ライオンキング』)、そして「さよならまたね」(『サウンド・オブ・ミュージック』)で、本当の締めくくり。目と耳、そして心までが幸福感でいっぱいになったところで、この日の水先案内人役、味方さんが「また劇場でお会いしましょう」の一言とともにドアの向こうへ消えてゆくと、そのドアもぱたんと倒れ、消えてゆく。マジシャン一家のご出身である加藤さんらしい、マジカルで小粋な演出ですが、同時にそれは、舞台というものが形を持たず、上演と同時に消えてしまう「瞬間の芸術」であり、観客の心の中でしか生き続けることのできないものであることを比喩しているよう。今、観たばかりの舞台をより心に焼き付けたくなるような、切なさも感じられる幕切れです。