東洋医学から考える不眠症
東洋医学の考えでは、精神の安定や適切な睡眠や起床などのリズムは、全て神(しん)の働きによるものと考えられています。神とは生命減少そのものであり、身体のあらゆる現象の発生を担っています。この神は臓腑の一つである心(しん)に宿っていると考えられています。
神が心に収まり、安定して機能するときには睡眠の状態も良好になります。しかし、脂っこいものの食べ過ぎや暴飲暴食などを繰り返すと、体内に水分が留まり、やがて痰(たん)に変わります。この痰の持つ熱が心の機能を妨げるため、心に宿る神が安定しなくなり、睡眠のリズムが破綻しなかなか眠りにつけなくなってしまいます。
胃のエネルギーを回復させる中かん
食生活が乱れ、体内に痰が発生していることが不眠の原因であるため、胃(い)の経絡のエネルギーを回復させて消化を助け、痰を排泄することが大切です。中かん(肉月に完)はみぞおちとおへその中間にあるツボで、胃の経絡のエネルギーを回復させる効果を持ちます。
肝の気の停滞が不眠の原因になる
また、いらいらや怒りなどの感情が強いときは肝(かん)の気の流れが滞ります。東洋医学の考えでは、肝は血液を貯蔵する働きを持ちます。夜に眠くなる原因の一つは夜間に肝に多量の血液が流れ込み、脳に行く血液が少なくなるからだと言われています。怒りの感情で肝の機能が低下してしまうと、脳に血液が留まったままになり眠ることができないのです。肝が原因の不眠症は興奮して落ち着かず、つい起きて活動してしまったり、眠りについてもすぐに目が醒めてしまうなどの特徴を持ちます。
肝の気の流れをスムーズにさせ、血液が肝に流れ込む状態を作ることが大切です。肝兪(かんゆ)へのマッサージは肝の気の流れを回復させる効果があります。肩甲骨の一番下の高さにある背骨から二つ下のでっぱりから左右の指幅二本分外側にあります
津液の流れを改善して不眠の症状を軽減する腎兪
過労やなんらかのストレスも不眠症の原因になると考えられています。疲労や恐れの感情は腎(じん)の気の流れを低下させると考えられます。腎は全身をうるおす体液である津液(しんえき)を運行させる機能がありますが、この運行がスムーズに働かなくなると心のもつ陽気を冷ますことができなくなり、神が不安定になり入眠できないという状態になります。このタイプの不眠はなかなか寝付けない、寝てもすぐ目を醒すなどの特徴を持ちます。
腎兪には腎のエネルギーを回復し、気の流れを正常化する効果があるとされています。腎兪はウエストの高さにある背骨から左右の指幅二本分外側にあります。
このように、東洋医学においては不眠の症状によって原因となる経絡が違うと考えられています。御自身の生活習慣や症状に併せて利用するツボを選ぶようにすることが大切です。