1971年クリント・イーストウッド初監督作品「プレイ・ミスティ・フォー・ミー(恐怖のメロディ)」
恐怖のメロディ [DVD]
この映画は、今やハリウッドを代表する俳優&監督のクリント・イーストウッドの初監督作品。主演もしているサスペンス・スリラーです。
ラジオ局のDJをしている主人公(クリント・イーストウッド)のところにいつも決まった時間になるとジャズピアニスト、エロール・ガーナーの名曲「ミスティ」をリクエストしてくる女性がいました。
その女性と遊びのつもりでからんだが最後、主人公は身も凍る出来事に巻き込まれていく、という世の中の浮気願望がある男性には他人事でない内容。
1987年の大ヒットした「危険な情事」(「スパルタカス」のカーク・ダグラスの息子マイケル・ダグラス主演)の元になったかのようなストーリーは、当時はまだなかった表現「ストーカー」を扱ったサスペンス・スリラーの先駆的作品としての評価を受けています。
そのほかにも、この映画には、ジャズフリークで有名なクリント・イーストウッドらしい演出があります。モンタレー・ジャズ・フェスティバルに出演中のキャノンボール・アダレイの演奏の場面が挿入されています。ジャズファンにしたら思わずニヤリとしてしまう心憎い場面です。
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そしてこの映画の題名にもなっており、物語の始まるきっかけにもなっている「ミスティ」は、やはりこのオリジナルで聴きたいものです。
エロール・ガーナー「ミスティ」より「ミスティ」
ミスティ
この「ミスティ」という意味は、霧が立ち込めて霞がかかったというような意味や、涙で目が曇ったといった意味があります。まさにこのジャケットのような状態です。
この曲は、以前にも「恋愛シーンのジャズ、さらにセクシーな曲……ベスト3」で紹介していますが、エロール・ガーナーが飛行機に乗っているときに浮かんだメロディをもとに作られています。もしかしたら移り行く雲を見ていてひらめいたのかもしれません。いずれにしてもミステリアスで美しいテーマです。
この曲はエロール最大のヒットにして、ジャズスタンダードとしても有名になりました。色々なミュージシャンやヴォーカリストが取り上げていますが、私もこの「ミスティ」という曲にはちょっとした思い出があります。
ある時、ふとラジオから流れてきたこの曲を聴いて、そのテナーサックスの音色から、これこそは、テナーサックスの巨人「ジョン・コルトレーン」による演奏だと思ったのです。
そして、その音色が忘れられない私は、ジョン・コルトレーンのミスティを必死で探しました。でも、コルトレーンの演奏した「ミスティ」は何処にもないのです。
そしてある時、自宅のCDを整理していた私の前に、以前購入していた1枚のCDがふと目に留まったのです。そのCDがファラオ・サンダースの1992年のアルバム「愛のバラード」です。
「愛のバラード」「愛のクレッセント」
実は購入して、ほとんど聴いていなかったこのCDを何気なく手に取ると、そこにはなんと「ミスティ」の文字が。
あわてて、再生してみると、スピーカーからはまさに何年か前にラジオから流れてきた、至極の「ミスティ」、コルトレーン・サウンドが…
この時ほど、ファラオ・サンダースのすごさを感じたことはありません。まさしく、そこにはコルトレーンであればこう吹いたであろうという「ミスティ」の世界がありました。
コルトレーンのバンドでまさに隣で吹いていたファラオにして初めて到達できる境地。フォロワーと一言では呼べない精神的なシンクロ感により、ファラオの音色はコルトレーンの音色と同調したのです。
その時から、このファラオによる「ミスティ」は私の愛聴曲になりました。
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