キャピキャピした白のナイト軍団とウサギ。2012年公演より。
ワンダーランドではいかれた&いかした奴らがお祭り騒ぎ
かといって、シリアス一辺倒というわけではないんです。ワンダーランドでは、いかれた&いかしたへんてこな奴らが次から次へと登場します。せっかちで気がちっちゃいウサギ、ストーカー並みにアリスを守りつつ激しくお間抜けな白のナイト、妙にのっそりおっとり哲学者風の芋虫、チャラくてラテン系のお気楽猫エル・ガト、会ったらすぐに呪いをかけられてしまいそうな悪の親玉・帽子屋とその子分モリス、「バランスが大事」と言いつつあっさり「首をはねよ」とも言うハートの女王……。揃いも揃って、どこかネジがゆるんだキャラばかりなんですよね。
紅白歌合戦並みに力を入れた、独立したナンバーの豪華ショー
この舞台では、個性豊かな各キャラクターそれぞれに独立したナンバー、セット、振付があり、その豪華さはまるで紅白歌合戦。何せこの作品、振付家がナンバーによって異なるため、9人もついているという力の入りようで、これはミュージカル界においても異例なこと。普通はひとりの振付家が作品全体を通して体力の配分を考えながら振りをつけていきますが、この舞台ではそれぞれの担当が各ナンバーに「これでもか!」と渾身の振りをつけていますから、キャストはどの曲も頑張らなければいけない。観る分にはバラエティに富んでいて楽しいけれども、演じるキャストたちにとっては実にハードだと思います。
非日常を演じるには、毎日テンションMAXで!
キャストにとってハードなのは振りだけでなく、芝居のテンションの面でも同じ。特にワンダーランドのシーンでは、日常からかけ離れた、能天気でいかれた世界観を出すために、キャストはテンションをガーッと上げ続けなければいけません。これってほんと、エネルギーがいることなんです。日常の延長のような芝居では客席には伝わらない。公演期間は毎日がお祭りのクライマックスみたいなものですから、いつもの何倍も体力、気力を使う現場だろうなと思います。そのおかげで、私たち観客は大きなパワーをもらえるのですが!
芋虫軍団。シマシマ&渦巻きでインパクト大。2012年公演より。