ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

結果発表!劇団四季『アラジン』オーディション(2ページ目)

15年5月の開幕にむけて始動した劇団四季の『アラジン』。このページでは刻々と記事を追加していきますが、今回は11月17~18日に行われたオーディションの模様をレポート!1500通の応募の中から書類審査、予選を勝ち抜いたなかには意外な顔も予想通りの顔もあり、アメリカ側のスタッフを迎えた公開オーディションは、手に汗握るものとなりました。*結果が発表されました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

一瞬で「この人」が選ばれる現場
オーディション2日目「アラジンの仲間たち、フォーチュン・テラー、サルタン、アラジン」


翌日はまず前日、出席できなかったアラジンの8人目の候補の審査後、アラジンの3人の盗賊仲間、バブカック(候補3名)、カシーム(候補5名)、オマール(候補5名)の審査から。一人ずつ、コーラス曲「Babkak, Omar, Aladdin, Kassim」の各自のパートの歌唱、そして泥棒家業をやめようとアラジンが言い出すシーンでの台詞が課題です。アニメ版ではサルだったアラジンの「仲間」が舞台版では3人の人間が演じるとあって、3人のキャラクターの明確な棲み分けが問われる模様。ただ、合唱場面があるためか、それは演技や雰囲気のみならず音楽面でも求められるらしく、役の雰囲気はよく出ている候補者に対して「あなた、本当はこの声域ではないですね」とシビアに確認する場面も。その一方ではマントやサンダルなど、アラビアの盗賊らしい自前衣裳で登場する候補者にスコットが「その靴いいね~」と声をかけたりと、緊迫した空気は時折ふっと和らぎます。

3役の審査が終わると、5分休憩の後、数分の協議で3人ずつに絞られ、アラジン候補3名とともに4人の台詞審査が行われることに。ここでスコットから「カシームはこの仲間たちのリーダー格で、ちょっとナルシスト。常にジョークを言っている感じ。バブカックはこの中で一番賢いがのんびり構えていて、食べ物が大好き。オマールは繊細な心を持った詩人タイプ」という説明があり、スタート。さきほどは一人ずつ歌っていたナンバーを3人で歌うと、もともと声量豊かなメンバー揃いのため、マイク無しでも天井の高い場内にびんびんに歌声が響きます。

アラジンを加えての台詞のやりとりでは、スコットの「とにかくペースをあげて、間を入れずに演じて」とのリクエストに各組、真剣に取り組みますが、キーパーソンはリーダー格のカシーム。彼が絶妙の間合いで場をぐいぐい引っ張るチームは台詞がうまく流れ、雰囲気もなじんで見えます。スコットは何度か組み合わせを変えて「もう一度やってみて」とリクエストしていましたが、回を重ねるごとに4人が自身の役どころ、そして仲間としての連帯感を深めてゆく様子は目覚ましく、最後の組み合わせは本番さながら?と思わせるレベルに。日本版『アラジン』はこういう舞台になるのだと片鱗が見え、わくわくしてきたところで、スコットたちも満足げに顔を見合わせ、終了。ビデオ審査の候補者もいるためこれが最終決定ではないと思われますが、最後の組み合わせに残ったメンバーはかなりの有力候補でしょう。

四季食堂のメニューから。ご飯は白米とこちらの「健康米」の二種。日替わりデザートはプリン。Photo:Marino Matsushima

四季食堂のメニューから。ご飯は白米とこちらの「健康米」の二種。日替わりデザートはプリン。Photo:Marino Matsushima

昼食をはさんで午後の審査はフォーチュン・テラー(女占い師)から。この役の4名の候補たちも、それぞれにマントなどで役の雰囲気を作っています。課題はたった2フレーズの歌唱のみなので、一人1分にも満たないのですが、スコットたちは瞬間的にピックアップ。「この人」と思った候補者のシートに大きな丸をつけていました。

続いてジャスミン王女の父、サルタン王の審査。候補は5名、ディズニー・ミュージカルや『オペラ座の怪人』でお馴染みのベテラン俳優たちが次々に登場し、台詞入りのナンバー「Prince Ali (Sultan Reprise)」を歌った後、ジャファーや娘の花婿候補との会話シーンを演じます。台詞の前にスコットから「サルタンは有能な王だが、娘に対してはでれでれのパパ。そして伝統を重んじる一面もあります」と説明があると、ベテランらしく皆さん、瞬時にサルタンになりきっていました。見ていて正直、「全員合格でもいいのでは?」とも思いましたが、スコットは容赦なく二人をピックアップ。ジーニー役とは違い、サルタン王に関しては彼らが求める人物像は明確に絞り込まれているという印象を受けました。

午後2時、予定されていたオーディションはすべて終了。スコットが声をかけ、伴奏をつとめたピアニストやこの空間にいるすべてのスタッフへの拍手が起こりました。前述のとおり別日審査の候補者もいるため、最終的な選出は後日となりますが、この二日間の手応えはかなり大きかった様子。スコットたちディズニー側の、晴れ晴れとした表情がすべてを物語っていました。最終決定は近日。発表が待たれます。

【オーディション結果発表!】

『アラジン』出演候補となった俳優たちundefined撮影:下坂敦俊

『アラジン』出演候補となった俳優たち 撮影:下坂敦俊

出演者オーディションの結果が11月25日、発表されました。「出演者決定!」ではなく、「候補者決定」、つまり出演を目指してリハーサルには入るが、劇団やディズニーの求めるキャラクター、レベルになりきれなかった場合は出演できない……というのが、劇団四季ミュージカルの厳しさです。

先日のオーディションでスコットたちが頷き合っていたメンバーは全員、このリストにお名前がありますが、このほかにも「有力」と見えた受験者は少なくありませんでした。ロングランが想定される演目ですから、まずは第一キャストが各自の役の道筋をしっかりつけることで、追々、他の俳優たちにもチャンスが巡ってくることでしょう。その日のためにも、今回いったんは「落選」となった俳優たちも、ぜひ腕を磨き続けてほしい…と、当日の皆さんのひたむきな姿を見学していた筆者は思います。

*以下、オーディションで選ばれた「出演候補者」たちです(敬称略)*
「アラジン」島村幸大、厂原時也、海宝直人「ジャスミン」岡本瑞枝、三井莉穂「ジーニー」道口瑞之、瀧山久志「ジャファー」牧野公昭、本城裕二「イアーゴ」酒井良太、町田兼一「カシーム」西尾健治、萩原隆匡「オマール」斎藤洋一郎、山下啓太「バブカック」白瀬英典、正木棟馬「サルタン」石波義人、増田守人


*次ページからは9月に行われた本作の制作発表記者会見レポートをお送りします。*

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