偉大なるシャンパン愛好国ロシア!
観光のメッカ、赤の広場、聖ワシリイ大聖堂。9月の風は心地いい。
突然だが、ご存じだろうか、ロシアは歴史あるシャンパン愛好国だということを。
かのクリスタル(ルイ・ロデレール社のプレミアムシャンパン)は、ロシア皇帝アレクサンドル2世の要望により誕生したものだし、2番目に古いシャンパンメゾンであるシャノワール社のツァリーヌ(Tsarine)は、ロシア皇帝=ツァーへの敬意を表して造られたブランドだ。第一次世界大戦中、フィンランドで駐留するロシア軍の志気を鼓舞するためにロシア皇帝ニコライ2世は1907年ヴィンテージ・エドシックモノポールを3000本注文し、宮廷ではカナール・デュシェーヌ社のシャンパンを愛飲していた。
ロシア産のスパークリングワイン、ラベルにはしっかりシャンパーニュの文字が…。
19世紀当時、シャンパンの主要輸出先は隆盛を極めた帝政ロシアであったのだ。その影響はいまでも濃厚に引き継がれている。このたび、モスクワに行って、それを確認してきた。いや、シャンパーニュの人気を確認したのではない。日本酒スパークリングの可能性を確認したのだ。
シャンパンスペックのスパークリング清酒「MIZUYBASHO PURE」に注目が!
ロシア人の飲食業界関係者向け、日本酒セミナーが開催された
日本酒セミナーは、ロシア新聞社の協力で飲食業界関係者およそ20名が参加。日本酒の基礎知識とともに数種のテイスティングをした。
試飲で注目だったのが、スパークリング清酒だったのだ。
現地では、日本酒はまだ熱燗で飲むものという認識がつよく、やっと大吟醸などが知られ始めたばかり。きめ細かい泡と洗練されたドライな味わいの発泡日本酒が存在することにかなり驚いた様子だった。
MIZUBASHO PUREはスタイリングもシャンパンと同じエレガントだ
今回紹介したスパークリング清酒は、群馬、永井酒造の「MIZUBASHO PURE」。瓶内二次発酵で造られる泡はきめ細やかで持続性が高い。アルコールは日本酒としてはやや低めの13%。そして重要な特徴は「濁りがないこと」。ボトルスタイリングも含め限りなくシャンパーニュに近い。
現在の発泡清酒のほとんどはにごり酒の延長が多く、透明なものはいまだ数が少ない。セミナー参加者からは「滓はどうとるのか?」「泡の気圧は?」「酸度は?」などプロならではの質問が相次いだ。資本化された後はとくに高級シャンパンがよく売れるし、最近品質の良くなったロシア産スパークリングも市場に広く出回っているという。シャンパンスペックのスパーリング日本酒は、間違いなく日本酒のエントランスになると参加者はいう。
日本酒セミナーでは、そのほか、華やかなタイプとして「純米大吟醸 作」、軽快なタイプとして「司牡丹 船中八策」、コクのタイプとして「大七 純米生もと」、熟成酒として「人気一 熟成酒1998年」をご紹介し、飲用温度帯の広さや酒器の豊富さも知ってもらった。
さらに、ロシアの酒席おつまみ料理「ザクースカ」には淡麗な酒、「ボルシチ」などのスープ料理にはコクのタイプなど、ロシア料理と日本酒の相性の良さを提案。参加者には『日本酒ナビゲーター』の資格を取得してもらい、日本酒のPRを託してきた。
北京でもパリでも人気!
また、高級和食とともに高級日本酒が売れ始めている北京でも、とくにスパークリング清酒の注文が増えている。ワイン同様に温度管理されたスパークリング清酒が清酒カーヴ(!)に収められる高級寿司屋なども登場している。
さらに、獺祭(旭酒造)の専門レストラン&バーがパリにオープン。獺祭のスパークリングはもとより、同様のスパークリングワインが食前酒や食後に飲まれることが増え始めているという。
偉大なるシャンパン愛好国ロシア、急激な資本化で高級清酒が売れ始めている北京、日本酒専門レストランオープンで日本酒&スパークリング清酒ブームが来るか……というパリ。
世界の各地でスパークリング清酒の人気が“スパーク”するのはそう遠くはなさそうだ。世界から逆輸入(!)される前に、シャンパンスペックの発泡清酒、日本酒ファンならちゃんとチェックしておきたい。