ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

ティム・ライス最新取材&London『エビータ』開幕!

この秋、ロイド=ウェバー&ティム・ライスの名作『エビータ』が久々にロンドンで上演されます。貧しさのどん底から大統領夫人へと上り詰め、33歳で早逝したアルゼンチン人女性、エバ・ペロン。彼女の生き様をドラマティックに描いた本作は今回、どう舞台化されているでしょうか。プレビュー初日レポートとともに、作者ティム・ライスへの単独インタビューをお届けします。気になる最新情報もお尋ねしてきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

Sir Tim Riceundefined44年英国生まれ。65年に作詞を始め、アンドリュー・ロイド=ウェバーと『エビータ』、ウルヴァース&アンダーソンと『チェス』、エルトン・ジョンと『アイーダ』など数々のミュージカルを創作。トニー賞、グラミー賞、アカデミー賞等多数受賞している。(C) Marino Matsushima

Sir Tim Rice 44年英国生まれ。65年に作詞を始め、アンドリュー・ロイド=ウェバーと『エビータ』、ウルヴァース&アンダーソンと『チェス』、エルトン・ジョンと『アイーダ』など数々のミュージカルを創作。トニー賞、グラミー賞、アカデミー賞等多数受賞している。(C) Marino Matsushima

『ジーザス・クライスト=スーパースター』『チェス』『美女と野獣』『ライオンキング』等の作詞や脚本を手がけ、ミュージカル・ファンにはお馴染みのティム・ライス。彼がアンドリュー・ロイド=ウェバーと組んだ最後の全幕作品で、日本では劇団四季の人気演目でもある『エビータ』が今秋、8年ぶりにロンドンで上演されます。ビル・ケンライトが演出を手掛けた今回のプロダクションは、タイトルロールにポルトガル人の歌手・女優マダレナ・アルベルト、チェ役にポップ・グループのWet Wet Wetで活躍したマーティ・ぺロウなど、実力派のキャストが話題。プレビュー初日の9月16日朝、ティム・ライスをご自宅に訪ね、『エビータ』や最新作のお話をうかがってきました。

当初の予定にはなかった『エビータ』ロンドン再再演


――本日(9月16日)、ロンドンでは2006年以来となる『エビータ』再再演のプレビューが始まります。55回の限定公演というのは、無期限のロングランが普通のロンドンではあまりないことですね。

「確かによくあるケースではないね。今回は、昨年始まったツアー版の一環のような位置づけなんだ。もともとロンドン公演は予定されていなかったけれど、ツアー版が非常に評判が良く、せっかくなのでロンドンでもどうだろう、という話が出てきた時に、2か月だけ空いている劇場(ドミニオン・シアター)があるということで踏み切ったようだよ。

常識的には、ロンドンで55回きりの公演というのは、経費が全く回収できないのでありえないことなのだけれど、ツアー版という形でプロダクションが既に出来上がり、舞台もキャストも固まっている状況だったので、さらなる経費はそれほどかからなかったのだろう。もちろんウェストエンド向けに、よりグラマラスにビジュアルや演出に手を入れているとは思うけれど。」

――前回のロンドン公演は2006年。これだけ名高い作品にも関わらず随分ブランクがあった印象があります。
『EVITA』プログラム

『EVITA』プログラム

「そうかな。ウェストエンドは日本とはちょっとシステムが異なり、5~6年ロングランした作品は、閉幕するとしばらくカムバックしないのが普通なんだ。今年、新版が開幕した『ミス・サイゴン』だって、20年ぶりのカムバックだよ。『エビータ』は今回が3回目のロンドン公演で、初演と再演の間も8年だった。3回上演されているというのは多い方なんだ」

――昨年、ツアー中にご覧になったそうですが、ボブ・トムソンさん(『スクルージ』『クリスマス・キャロル』)とビル・ケンライトさん(『ブラッド・ブラザース』『ヨセフと不思議な総天然色のドリーム・コート』)による共同演出はいかがでしたか?

「昨年、コーンウォールという英国の僻地(笑)で観たけれど、とても良かったよ。観客も気に入っていたようだった。ロンドンでもうまくいくのではないかな。とにかく主演の二人がとてもいいし、音楽もいいからね」

――単純なサクセスストーリーではなく、そのためには手段を選ばなかったり大統領夫人となってからは私腹を肥やしていたエピソードも描かれている本作は、演出にあたり、主人公にどういうスタンスで目を向けるかが問われる作品かと思います。
『EVITA』Photograph by Darren Bell

『EVITA』Photograph by Darren Bell

「そうだね。共感と批評性、その双方が必要だと思う。エバ・ペロンのいい面も悪い面も描いているからね。ただ、ショーを観た方の一般的な感情としては、彼女への好感が少しだけ勝つのではないかな。ヒロインが33歳の若さで癌でなくなるなんて、悲しい結末だからね。もちろんエバ・ペロンという人物の生き方については批判が多いことも分かっているよ。でもペロン政権に問題があったのは、彼女だけではなく(大統領である夫の)ペロンの問題でもあるからね。今回の演出も、60%は彼女に好意的なのではないかな」

――あなたが執筆していた時も60%好意的だったのですか?

「いや、フィフティ・フィフティだったよ。でも今回は演じる女優がとても魅力的で歌もいいので、観始めたらきっとエビータに魅了されると思う」

*次頁で最新作の動向などをお話いただきました。*

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