Sir Tim Rice 44年英国生まれ。65年に作詞を始め、アンドリュー・ロイド=ウェバーと『エビータ』、ウルヴァース&アンダーソンと『チェス』、エルトン・ジョンと『アイーダ』など数々のミュージカルを創作。トニー賞、グラミー賞、アカデミー賞等多数受賞している。(C) Marino Matsushima
当初の予定にはなかった『エビータ』ロンドン再再演
――本日(9月16日)、ロンドンでは2006年以来となる『エビータ』再再演のプレビューが始まります。55回の限定公演というのは、無期限のロングランが普通のロンドンではあまりないことですね。
「確かによくあるケースではないね。今回は、昨年始まったツアー版の一環のような位置づけなんだ。もともとロンドン公演は予定されていなかったけれど、ツアー版が非常に評判が良く、せっかくなのでロンドンでもどうだろう、という話が出てきた時に、2か月だけ空いている劇場(ドミニオン・シアター)があるということで踏み切ったようだよ。
常識的には、ロンドンで55回きりの公演というのは、経費が全く回収できないのでありえないことなのだけれど、ツアー版という形でプロダクションが既に出来上がり、舞台もキャストも固まっている状況だったので、さらなる経費はそれほどかからなかったのだろう。もちろんウェストエンド向けに、よりグラマラスにビジュアルや演出に手を入れているとは思うけれど。」
――前回のロンドン公演は2006年。これだけ名高い作品にも関わらず随分ブランクがあった印象があります。
『EVITA』プログラム
――昨年、ツアー中にご覧になったそうですが、ボブ・トムソンさん(『スクルージ』『クリスマス・キャロル』)とビル・ケンライトさん(『ブラッド・ブラザース』『ヨセフと不思議な総天然色のドリーム・コート』)による共同演出はいかがでしたか?
「昨年、コーンウォールという英国の僻地(笑)で観たけれど、とても良かったよ。観客も気に入っていたようだった。ロンドンでもうまくいくのではないかな。とにかく主演の二人がとてもいいし、音楽もいいからね」
――単純なサクセスストーリーではなく、そのためには手段を選ばなかったり大統領夫人となってからは私腹を肥やしていたエピソードも描かれている本作は、演出にあたり、主人公にどういうスタンスで目を向けるかが問われる作品かと思います。
『EVITA』Photograph by Darren Bell
――あなたが執筆していた時も60%好意的だったのですか?
「いや、フィフティ・フィフティだったよ。でも今回は演じる女優がとても魅力的で歌もいいので、観始めたらきっとエビータに魅了されると思う」
*次頁で最新作の動向などをお話いただきました。*