マンションの価格は在庫の増減に連動する
上のグラフはレインズ(東日本不動産流通機構)「月例マーケットウォッチ」から中古マンションの在庫件数と成約価格(単価)をグラフで表したものだ。オレンジ系が首都圏、青系が東京都である。
それぞれの変動を見比べると「在庫と価格の相関」が読み取れる。在庫が増えれば成約単価は下がり、在庫が減れば上がっていく。不動産の価格は、需要と供給のバランスで決まるというが、これほどまでに実直に示されるというのもまた驚きである。
ちなみに、表記の期間を簡単に解説すると。
グラフはリーマンショック直前からはじまっている。過去最大級の住宅ローン控除を実施するなど経済対策が奏功し、2009年初頭から在庫は減少トレンドに。民主党政権に切り替わった2009年9月から横ばい、鳩山前首相が退陣した2010年6月以降在庫は積み上がっていった。膨れ上がった在庫は、第二次安倍政権発足後、一気に減少していった。成約単価はとくに東京都の上昇角度がきつく、湾岸エリアなど都心部の高騰ぶりが推測できる。さて、このまま右肩上がりは続くのだろうか。
枯渇感は年度後半薄れていく!?
今、全体の景況感は踊り場のような状況である。消費増税の反動は結局避けられず、夏場の消費も期待ほどではなかったというが、経済紙の予想にあるように「秋以降に盛り返す」かどうか。株式相場は9月26日年初来高値を更新したが、この9ヵ月投資家の思惑通りだったとは決していえないだろう。為替も含め、ようやく動き出したという印象ではないか。前述の「月例マーケットウォッチ」(レインズ発表)8月度では「成約単価」は変わらず9.2%アップ(前年同月比)を示している。「成約件数」も5.9%ダウン(同)と「モノが少ない」ことを表す。しかし、変化の兆しが見て取れる。
新規登録件数は2.2%アップ(同)。これは、7月から2か月連続。レポートでは「取引の減少が続くなかで、新規登録件数は昨年来の減少傾向が収まりつつある」としている。また、在庫も10ヶ月連続で減少はしているものの、「6月から前月比で増加している」。今夏の変化が継続するようであれば、在庫が反転する可能性は否定できない。
値動きは一様ではない!?
新築マンション市場では、8月に契約率を大きく下げた(参照:新築マンション突然の低迷の裏にある、急激な価格上昇)。分譲価格がある程度まで上昇すると、買い手がついてこれず、売れ行きが悪化する。この現象は、昭和のバルブ、2007年のミニバブルと2回経験済みだ。行き過ぎた相場は調整が入る。もしも、資産価値(換金性)を重視されるのであれば、時期を見誤らないようにしたい。今回の特殊要因は、東京五輪2020やリニア中央新幹線開通など都市への巨大投資が控えていることだろう。利用価値が高まれば、不動産の資産価値は上がる。つまり「調整の必要なエリア」と「上がっても売れるエリア」が混在すると推察できる。広域を一様に捉えない発想がますます求められる。
(参考)月例マーケットウォッチ(レインズ)
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