世界農業遺産、能登の食材をシンプルに
華やかな経歴もなく、ましてやレストランでの調理経験もないシェフが営む小さなビストロが連日大繁盛だ。私はこれまで錯覚をしていたのかもしれない。料理長や支配人の経歴とか実績とかそういった過去をまことしやかに意識していたことを。マルゼンのマルは月を表しているのだろうか。
カウンターは詰めて7席。奥にテーブル席がある。
それにしても当日予約でカウンター1席空いていたのは幸運だった。
メニューも能登の素材を使ったメニューが並ぶ。前菜はほとんどが650円~850円とリーズナブル。野菜、鶏、豚、そしてレアな能登牛。能登牛が2600円というとおそらく原価率50%は超えているだろう。しかしシェフはそんなことは気にしていないだろう。自然なこだわりをお客に押し付けることなく、カウンターの中で調理をし、そして客とのショートトークを楽しんでいる。きっと「ああ、この仕事って楽しい」と心からそう思っているに違いない。