学費・教育費/奨学金制度と教育ローン

犯罪被害者の子どもを支える「まごころ奨学金」

2014年8月、「政府がまごころ奨学金の返済を条件次第で免除する制度を検討」とのニュースが流れました。この報道で初めてまごころ奨学金を知った人も多いのでは。対象者や貸与金額、借りるための条件などをまとめました。

鈴木 さや子

執筆者:鈴木 さや子

学費・教育費ガイド

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親が犯罪や事故に遭い、経済的に困窮する子を支援する制度

まごころ奨学金は、公益財団法人「日本財団」が運営している2013年度にスタートした新しい制度。殺人事件や交通事故、詐欺被害などで親を失ったり、犯罪に巻き込まれた親が働けなくなったりして経済的に苦しむ学生たちに、無利息でお金を貸し付ける制度です。

大学生の場合は、毎月8万円、入学一時金30万円を上限に、最大30年間の返還期限で借りることができます。表に奨学金制度の概要をまとめました。
まごころ奨学金の概要

大学生は月額8万円を無利息で借りられます

返還義務はあるとはいえ、無利息で借りられるため、対象に該当して経済的に困窮している学生にとってはかなり助かる制度ではないでしょうか。

しかし実際のところ、制度がほとんど知られておらず、利用者の数は低迷しているのだそうです。

振り込め詐欺の被害金が原資

まごころ奨学金は、「振り込め詐欺」において、被害者に返せなかった資金の有効活用を目的としてできた制度です。

振り込め詐欺で金融機関に預けられたお金は、「振り込め詐欺救済法」に基づいて被害者が申請すれば返還されることになっています。しかし申請がない、被害者が特定できないなどの理由で、返せなかった資金(=預保納付金)が、2013年度で約50億円にも上っています。その一部を、犯罪被害者の支援のために活用すべくできた制度が、まごころ奨学金なのですね。

知名度が低く活用されていない現状

何十億もの資金の活用を目的にされた奨学金ですが、実際にはその利用は低迷しています。奨学金の申請者は2013年度に47名、そのうち実際に奨学金の貸付けを受けた学生は31名、貸与実積は総額2828万円(※1)。何十億もの原資と比べてみると、ほとんど活用されていない現状といえるでしょう。

利用低迷の原因は、知名度の低さだけでなく、借金を背負うことへのためらいなども挙げられます。政府は活用を推進するために、学業などの条件次第で奨学金の返済を免除もしくは軽減し、より使いやすくしたいと検討を始めているとのこと。また、貸与型から給付型に変更できるようにすることなども検討されているそうです(※2)。

保護者の所得制限もなく、他の奨学金との併願も可能なまごころ奨学金。こうした制度があるということを知っておくと、万が一の時に役に立つかと思います。今後少しずつこの制度が知られていくと良いですね。

(※1)日本財団ホームページ「2013年度貸与実積」より引用
(※2)8月20日付毎日新聞の記事による

【関連サイト】
預保納付金支援事業

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