顔もやることもそっくりで、やっぱりお互いに特別な存在?
『ふたりはふたご』
双子の兄弟姉妹がいるってどんな感じなのでしょう。おなかの中から一緒で、やはり何か特別な力でつながっている存在なのでしょうか。絵本『ふたりはふたご』は、一卵性双生児として生まれ、共に絵本作家として活躍し続けてきた田島征彦さん、田島征三さん兄弟が、一緒に作り上げました。「せいちゃん」と「ゆきちゃん」が幼少期を過ごした高知県の村の豊かな自然の中で、2人で遊び、けんかし、また遊ぶという、子どもらしい姿が生き生きと描かれています。ふたりはふたご
よく見ると、登場する双子の絵はタッチが違うようです。それぞれが、自分を描いているのでしょうか。背景の絵は、どのように分担して描いたのでしょうか。双子の兄弟で幼少期の思い出をもとに絵本を共作するなんて、とても憧れます。絵本の中の元気な2人を見ていると、顔もやることもそっくりで、しょっちゅう衝突して取っ組み合いのけんかもするけれど、やっぱりお互いを必要としていて仲良しなんだな、兄弟ってこうだよね、という気持ちにもさせられます。でも……。
双子ならではの魂のぶつかり合い
けんかしてもまたお互いを探し合って、大声で「せいちゃあん」「ゆきちゃあん」呼び合う双子の兄弟の絵を見ながら、ふと考えました。双子で顔も名前も似ている2人が絵本作家という仕事をする中で、必ず何らかの葛藤があるはず。そんな2人が作った『ふたりはふたご』には、どんなも思いが込められているのだろう? 何だか2人のことがとても気になり始めました。そして、2人の半世紀を作品や対談でまとめた本『激しく創った!! 田島征彦と田島征三の半世紀』の中には、魂のぶつかり合いがありました。この本の前書きは、同じDNAを持ち18年間同じ環境で育った2人の作風が溶け合うように似てしまうこと、相手を乗り越えることが現在の自分を乗り越えることであることなど、常に2人の関係が課題を抱え続けてきたことに触れています。『ふたりはふたご』については「せいちゃんとの絵本創りは胃が痛くなることばかりだった」という征彦さんの言葉が紹介されています。
「せいちゃん」と「ゆきちゃん」の魂の絆
本の中の対談でも「せいちゃん」「ゆきちゃん」と呼び合う2人。征彦さんも征三さんも、子どもの頃からずっとお互いを意識せざるを得ない状況の中で、時に嫉妬するようなこともありながら常にお互いを尊重し合ってきた様子が、やり取りの中に見え隠れしました。そんなことを感じ取りながら再び『ふたりはふたご』を読み返すと、双子という宿命の中で同じ絵本の世界で生きてきた征彦さん、征三さんの魂の静かで激しいぶつかり合いと揺るぎない絆が伝わってくるようで、出汁の利いたお味噌汁のような、深い味わいを感じました。元気な双子兄弟の愉快なお話という点では、4~5歳から楽しめると思いますが、小学校高学年ぐらいのお子さんと、「せいちゃん」と「ゆきちゃん」のそんな背景も親子で共有しながら読んでみるのもいかがでしょうか。