お茶の原料「チャノキ」は1種類しかない?
基本に立ち返って茶葉のルーツから紐解いてみると、お茶の意外な側面が見えてきます。ご存知かもしれませんが、紅茶や緑茶や抹茶の原料となる「チャノキ」は、すべて同じツバキ科/ツバキ属のチャノキ(学名:Camellia sinensis)1種類です。
1種類で同じチャノキなのですが、低木性で葉が小型の「シネンシス」と、高木性で葉が大型の「アッサム」という二つの変種があります(バラにも白い花、赤い花があるようなもの)。日本では低木性で葉が小型のシネンシスが、インド・スリランカでは高木性で葉が大型のアッサムが主に栽培されています。
太陽のエネルギーをいっぱいに受けた茶の葉には、すばらしい効果が眠っている
お茶の健康効果のメカニズム
健康効果はチャノキの葉に含まれているカテキンの効果が有名で、 血中コレステロールの低下・体脂肪低下作用・がん予防・抗酸化作用・虫歯予防・抗菌作用・抗インフルエンザ作用と、すばらしいものです。伊藤園は東北大学および静岡県立大学と共同研究を行い、茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズムの一部を解明したことを2014年6月6日に発表しました。
実はこのカテキンの茶葉の含有率は、なんと紅茶の原料であるアッサムが、緑茶や抹茶の原料となるシネンシスより2倍程度多いのです。だったら紅茶の方が良い……となりそうですが、実はそう簡単ではありません。
健康効果の高いカテキンですが、味自体はいまいちでお茶の“渋み”の味覚となります。そのためアッサムは日本茶と同じような緑茶にして飲んでみると、渋みが強く良い緑茶にはならないそうです。
紅茶は製造段階に発酵という工程を組み込むことで、渋みの強いカテキンを茶葉のなかにある酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)でオレンジ色や紅色の色素に変化させ、飲んで美味しいと感じられる味にコントロールしているのです。この結果、香りと味覚が絶妙の「紅茶」となるわけですが、カテキンは減少してしまいます。
緑茶は製造工程(蒸熱)で酸化酵素の働きを止めるため、カテキン類は減少せず、さっぱりとした茶葉のそのままの成分を味わうことができます。結果的にカテキンの含有量としては、緑茶も紅茶もあまり大差ないものとなっているようです。
ところで抹茶は、茶葉をそのまま粉に粉砕したものであり、茶葉の有効成分が直接摂取できるところが強みです。しかし、茶道の経験のある方なら分かると思いますが、濃茶(抹茶を少量のお湯で練った緑色の絵の具状の”飲み物”)は効果大です大量には飲めません(ホント)。
お勧めの飲み方:自分自身の本命を見つけるために
以上のように、紅茶・緑茶・抹茶とも十分な健康効果が期待されるわけですが、皆さん個人個人に応じた飲み方を構築されることが、やはり大切なのではないでしょうか。<参考資料>
- 茶のフレーバー「カテキンの生合成と化学変化」 化学と生物Vol.32, No.3, 1994
- 茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズムの一部を解明、カゴメ ニュースリリース