繰上償還の目安とは
投資信託は、純資産総額が一定水準以下になると、繰上償還といって、償還日前でも半強制的に償還されるケースがあります。どういう時に繰上償還されるのかというと、受益権の口数が30億口を下回ったり、あるいは純資産総額が30億円を下回ったりした時が、ひとつの目安になります。
なぜ繰上償還されるのかというと、運用を継続しても赤字になるばかりだからです。
投資信託会社は、ファンドの純資産から得られる運用管理費用が収入源です。つまり、純資産総額が減少すれば投資信託会社の収入も減り、運用を継続するほど赤字を重ねる結果になります。そのため、繰上償還という措置を取るのです。
投資信託は、基本的に長期で保有する商品ですから、購入後、短期間のうちに繰上償還されると、投資家は困ります。ある程度、純資産総額の大きな投資信託を買った方が良いと言われるのは、そのためです。
半分以上のファンドが繰上償還候補
では、純資産総額から見て、長期保有に耐えうる投資信託が、何本あるのかを調べてみましょう。前述したように、8月末時点の運用本数は5272本です。このなかから、DC向け、ミリオン、財形株投、SMA専用を除いた4091本のうち、純資産総額が30億円未満の投資信託は、全部で2785本あります。これは無条件に投資対象外になります。
また、さらに条件を厳しくして、たとえば純資産総額が100億円以上ある投資信託の本数をカウントすると、たったの789本しかありません。確かに、繰上償還されるバーは30億円未満ですが、だからといって30億円ギリギリの純資産総額では、解約によっていつそれを下回るか分かりません。余裕を持って見積もれば、やはり100億円程度の純資産総額は欲しいところです。
つまり、投資家が安心して長期保有できる投資信託は、4091本のわずか2割程度でしかないのです。