estrangeiroのヴォーカルとして
ガイド:アルバムは「Intro - The Theme Of Estrangeiro」から始まります。同じ年、estrangeiroというグループのメンバーであり、そこにも繋がっているんですよね。
カン:
そうです。そうなるようにと繋げてやりました。なのでenjeu-estrangeiroは繋がっている、というアプローチがしたかった作品です。
ガイド:
ちょっと話がestrangeiroに飛びますが、2000年あたりですでにestrangeiroにも参加されていて、ソロと同じ年にアルバム『estrangeiro』をリリース。グループ名はポルトガル語で「異邦人」という意味ですね。ラテン、カリビアン、アフロ、日本の民謡まで取り込んだWorld Music meets Club Music的な音作りとなり、今までのカンちゃんのフィールドとは違っていますが、ヴォーカリストとして苦労された点などあれば、教えてください。
estrangeiro (amazon.co.jp)
カン:
意外にも、歌に関しては全く苦労しませんでした。特に「Moea」という楽曲は即興で作りましたし、ほとんど歌は即興ですね。何も考えず、自分の中から出てくるものを素直に出した、という感じです。バックトラックを作っているチームはいろいろこねくり回して考えていたみたいなので、そこはもしかしたら苦労したかもしれませんね。歌い手としては一番楽に歌えた作品です。
このまま続けていたら私が駄目になる
ガイド:しかしながら、『Introduction』以降、再び、歌手活動は休止されます。ここで人生二度目の転機があったのかなぁと想像しているのですが、何があったのでしょうか?
カン:
estrangeiroとは2000年くらいからやってきたのですが、その間にメンバーも変わり意思の疎通も難しくなり、自分が当初考えていたバンドの運営方法とかけ離れて行くと感じました。バンド活動の中ではありがちな事かもしれませんが、そういう環境の中で続けていても、私自身が駄目になると思い、私はestrangeiroというか、歌手としての活動を一旦断ち切る事にしたのです。
飲んだくれていたらソムリエに
ガイド:『Introduction』のジャケにチリ産のLos Vascosのワインボトルが写っていますね。
カン:
Los Vascosはカメラマンさんがたまたま好きなワインだったみたいで、そこに置いてあったので(笑)。
ガイド:
カンちゃんは現在ソムリエとしてもシャンパン・バーのプロデュースもやっていますが、ソムリエになろうと思った理由は?
カン:
ソロ・デビューの時におつきあいしていた彼と別れて、精神がボロボロになって、行く先が見えなくなりました。声の為に一切飲まなかったお酒を25歳で初めて私は飲んだんです。それが「ロマネ・コンティ」。目が開いたような感覚になり、それからワインというワインを探して探求しました。というか飲んだくれてました(笑)。気がついたらソムリエ資格を取っていました。取ってなかったら、ただのダメ目人間になっていたと思います。今でも十分ダメダメですけど(笑)。ただ、ワインの仕事をするにあたっては広く浅くというよりも唯一のものを皆さんに楽しんで頂きたいと考え、シャンパーニュに絞りました。有り難いことに、飲食関係者の方々の来店もあるので、新人発掘のような(笑)気持ちで新しいアイテムを紹介するのが楽しいですね。
ガイド:
僕自身あまり飲めない質なのですが(美味しそうにグイグイ飲める人が羨ましくもある)、飲んだくれて、ソムリエ資格を取るというのはとても建設的ではないですか! ソムリエ修行はどの時期にされたのでしょうか?
カン:
NYから戻って来て一旦飲食の会社と広告代理店に入りました。どうも会社が合わなくて、大学院受験をしようと、その間に働いた「NOBU TOKYO」というレストランで修行、というか、教えてもらいました。ほとんどがソムリエで、ソムリエが当たり前の世界の中で、高級ワインがバシバシ開く中、毎日皿洗いしながら、でした。