毎年のように発生する土砂災害から国民を守るため制定「土砂災害防止法」
毎年のように発生している土砂災害
土砂災害の可能性がある危険な場所でも、新たな宅地開発は進んでいます。それでも国民の人命や財産は守られなくてはなりません。
こうした背景から、土砂災害の危険区域を明らかにし、警戒避難体制の整備・危険箇所への新規住宅等の立地抑制等の各種ソフト対策を充実させていくため制定されたのが「土砂災害防止法」です。
土砂災害防止法が制定されたきっかけは、1999年6月に発生した「広島豪雨災害」でした。豪雨が引き金となり山崩れ、がけ崩れ、河川の氾濫、土石流が多数発生、家屋被害4516件、死者および行方不明者32名(広島県防災Web公表データ)の甚大な被害が発生したのです。
これを機に建設省(当時)防災国土管理推進本部が開催され、「総合的な土砂災害対策に関するプロジェクトチーム」が設置された後「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」が制定され、2001年4月に施行されました。
「警戒区域」「特別警戒区域」の違い
同法では、土砂災害で住民の生命や身体に著しい危害が生じる恐れのある地域を指定し、危険を周知させ、警戒避難体制を整備したり、指定地域の建築物規制や指定地域からの移転支援について定めています。そのプロセスは以下のようになっています。国土交通省が作成する土砂災害防止対策基本方針に基づき、都道府県はおおむね5年ごとに渓流や斜面など土砂災害により被害を受ける可能性のある区域の地形や地質、土地利用の状況についての「基礎調査」を行い、土砂災害の恐れのある「土砂災害危険箇所」のうち、住民等の生命または身体に危害が生ずる恐れがある区域の土砂災害を防止するために「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」を指定することができます。あわせて、住民等の生命や身体に著しい被害が生じる恐れがある区域については、一定開発行為の制限や建築物の規制をすべき「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」に指定することができます。
土砂災害警戒区域は急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命または身体に危害が生じる恐れがあると認められる地域ですから、危険の周知、警戒避難体制の整備が行われます。たとえば、市町村地域防災計画への記載、災害時要援護者関連施設の警戒避難体制、ハザードマップによる周知の徹底、さらに宅地建物取引で、宅建業者は宅地または建物の売買では警戒区域内である旨について、重要事項説明を行うことが義務付けられています。
一方、土砂災害特別警戒区域では、特定開発行為(住宅地分譲・学校・医療施設等建築のための開発行為)に対する許可制や建築物の構造規制、あるいは建築物の移転等の勧告および移転支援の措置がなされます。
また、特別警戒区域では、宅建業者は都道府県知事の許可を取った後でなければ宅地の広告や売買契約の締結が行えず、あわせて重要事項説明を行うことが義務付けられます。
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