「救助」と「情報取得」ができる備えが大切
「プラベニヤ」による養生でストレスが低減する
金氏がマンション管理組合で重要なこととして挙げたのが、「救助」と「情報取得」ができる備え。震災直後は、公的な救援や救助は期待できません。マンション内で助け合う際に必要なのが、大きなバールとハンマーです。大地震では、マンションの玄関ドアは、揺れによる不具合で開かなくなり、その際に役立つ道具となります。一旦開いたドアは、今度は鍵が閉められなくなるのでチェーンと南京錠も開閉用にストックがあると便利とのことです。また、住戸の外廊下側の雑壁が崩れるケースもあり「プラベニア」による応急処置は、寒さから住戸を守りストレス軽減にも効果を発揮したとのことです。もう一つが、ホワイトボードなどの情報取得ツールです。震災直後は、もっとも欲しい近所の情報が入りません。例えば、「あそこのガソリンスタンドが開いている」などの店舗情報や「粉ミルク譲ります」などのマンション内のコミュニケーション。その際に大切なのは、「情報下さい」と呼びかけることだそうです。思いやり、助け合いの気持ちを持つことが大切です。また、発電機・テレビの室内アンテナなどもあると便利な設備だそうです。
また、防災倉庫の鍵の管理も重要です。管理員や管理組合の理事長が持つ場合、地震発生時に必ずしもマンションにいるとは限りません。管理組合の役員に通知するなどし、鍵が開けられないといった状況は避けねばなりません。
東日本大震災時、管理組合のコミュニケーションが活発なマンションは、マンション内で食料を持ちあって食事を作るなど助け合いが早期に行われました。また、マンションの復旧への意思決定も早かったようです。この段階で、工事費の補助など公助の力が発揮されましたが、すぐに対応できる会社が限られており、管理組合の復旧への意思統一がスムーズなマンションほどマンションの修復が早かったようです。工事費も上昇傾向にあったので着手が早いとその分修繕費の節減につながり、住民の負担も抑えられたとのことです。
日常のあいさつが重要 防災訓練の参加率は、仙台は約8割に
2014年度以降、全物件ウェルカムパーティーを実施
金氏は自らの経験をもとに、日常のマンション内のあいさつなど小さな心掛けが重要と話しています。もともと30%ぐらいだった仙台のマンションの防災訓練の参加率は、今は8割前後にもなるケースも。それだけ防災意識が高まっているという事です。東日本大震災では、3月11日の震災当日から約1カ月後の4月7日に震度6強の大きな余震がありました。このときに大きな損壊を被ったマンションも多かったようです。また貯水槽が上にあるマンションは、漏水の被害(洗濯機の栓のはずれなどが要因)が大きかったとも。2次災害への注意も必要です。
こうした災害への備えとして、マンション内では災害時の体制づくり(連絡網や居住者リスト)や防災備蓄品の場所の確認などを事前に確認しマンション独自の情報をマニュアルにすることが重要。大京アステージでは、こうした管理組合のマニュアル作りをサポートしています。
こうしたマニュアル作りも含め防災で重要なのはマンションのコミュニティ。大京では、こうしたコミュニティづくりの支援策として、2012年からウェルカムパーティーの取り組みをはじめ2014年度引き渡し物件のから全てのマンションで実施をサポートします。
セミナーの最後に金氏が述べたのは、「地震は必ず起きると思って防災意識を高めてください」ということです。地震保険の重要性についても言及しました。また、既存マンションで、定期的な大規模修繕をしていたマンションは比較的被害が少なかったとも。備えあれば憂いなし。セミナー直後に私も2ケース水を購入しました。「あの時買っておけば」と後悔しないよう、水と食料は自ら備えを行いましょう。