祖母の言葉と作品の世界が繋がった瞬間
――今後トライしてみたい役柄や作品があったら教えて下さい。
田代
いやあ、今はもう『きらめく星座』の事で頭が一杯ではあるんですが……機会があればゼロから作って行ける新作に挑戦してみたいですね。海外の作品も勿論魅力的ですが、例えば日本のクリエイターが”今”の時代を切り取り、”今”を映し出していくような作品があったら是非関わらせて頂きたいです。
――『きらめく星座』のお話に戻りますが、お稽古がかなり快調に進んでいると伺っています。
新旧の正一 木場勝己さんと(写真提供 こまつ座)
まだ立ち稽古に入って3、4日なんですが、もう全幕を通せる勢いです。皆さんが本当に素晴らしくて再登板チームは来週に初日!ってなっても成立するんじゃないかと思いますね。第5場で山西(惇)さんが長台詞を語る場面があるんですが、それを聞いているだけで胸に熱いものがこみあげてきて……。演出の栗山さんも「これは凄い作品になるな。」って何回も仰っています。作者の井上ひさしさんも『きらめく星座』の題字の右上に二重丸を付けていらしたそうなんです。
――井上さんにとっても思い入れの深い作品の1つだったんですね。
田代
ご自身の実体験に基づいて書かれた戯曲とも伺っています。僕もギリギリ昭和生まれで、レコードもギリギリ所有して聞いていた世代なんですね。5、6歳の時にクラシックのレコードを触った感触を今でも覚えていて、そういう感覚を胸に30歳の節目の年にこういう作品に出演できるのはとても嬉しい事です。
――では最後に田代さんからメッセージをお願いします。
田代
今回演じさせて頂く正一と言う役と僕とは共通点が沢山あると思っています。多分、彼も絶対音感を持っているし(笑)。音楽がない人生は考えられない、歌から元気を貰っているという点も同じです。僕、この作品の台本を読んで最初に思い出したのは祖母の事なんです。祖母が僕の舞台姿を見て「万里生はいいね、こんなに大勢の方の前でピアノを弾いたり歌ったりして沢山の拍手を頂けて。私達の頃はピアノを弾いたり大きな声で歌を歌ったりしていたら”非国民”って言われたのよ。」……そんな言葉をずっと聞いていたので、台本を頂いた時に自分の中で何かが繋がったような気がしました。
世界中で”音楽”がない国はないですし、誰もが日常の中で”歌”を口ずさむと思うんです。井上さんが戦時中に生きる人たちの姿を描くのに沢山の音楽や歌を盛り込んだ事の意味を考え、それを演じていく事が今の僕の使命の1つかな、と思っています。
2009年『マルグリット』のアルマン役で颯爽と演劇界に現れた田代万里生さん。クラシックの歌唱法を基盤に様々なジャンルの作品で活躍し、9月8日に開幕する音楽劇『きらめく星座』ではストレートプレイに初挑戦です。
この日行われた振り稽古では、自身の登場場面以外も舞台セット横で共演者の姿をじっと見つめ、時に一緒に踊ったり、誰かから歌のアドバイスを求められるとそれに真剣に答える姿がとても印象的でした。
撮影時には華麗なピアノテクニックも披露してくれた田代さん。ご本人曰く”忍者のように現れて、寅さんの様に去っていく”正一をどんな色で魅せてくれるのか注目したいと思います。
心に響く音楽劇『きらめく星座』
作 井上ひさし 演出 栗山民也
2014年9月8日(月)~10月5日(日) 新宿南口・紀伊國屋サザンシアター
⇒公式HP
(詳細な公演日時、東京以外の公演地、アフタートークショーの詳細等ご確認下さい)
※『きらめく星座』に正一役で出演していた田代万里生さんは頚椎棘突起(けいつい きょくとっき)の骨折の為、9月19日からの東京公演、及びその後の地方公演を降板する事になりました。9月24日(水)夜の部から正一役は峰崎亮介さんが演じます。詳細はこまつ座HPでご確認下さい。