6月10日(水)に新国立劇場・中劇場(東京・初台)で開幕した舞台『東海道四谷怪談』。「四谷怪談」と言えば”お岩さん”が出てくる怖いお話としても有名ですが、実は一人の女性の恨み節で終わらないエピソードが隠れている物語でもあるのです。

そんなポイントも含め、演劇ガイドが今回の上演舞台をご紹介して参りましょう!

東海道四谷怪談
=仮名手本忠臣蔵の外伝

この『東海道四谷怪談』が鶴屋南北によって書かれたのは江戸時代後期。当時は赤穂浪士の仇討を描いた『仮名手本忠臣蔵』と同時上演されていたそうです。夏のお約束=四谷怪談と、冬の風物詩=忠臣蔵……この二作が同時上演というのはちょこっと不思議な気もしますが、これはお岩さんを見殺しにした夫・民谷伊右衛門が実は塩冶(=赤穂)の浪人という裏設定があったから。

そう『東海道四谷怪談』は、実際にあった当時のワイドショー的ネタ(男女の心中事件や、川で発見された死体など)をモチーフにしながら、戯作者・鶴屋南北が『仮名手本忠臣蔵』の外伝として書いた戯曲なのです。これを頭に入れて『東海道四谷怪談』の舞台を観ると、なるほど!と膝を打つ場面もあったりしますよ。

東海道

(撮影:谷古宇正彦)
 

あらすじ
塩冶の浪人・民谷伊右衛門(内野聖陽)は、実家に帰った女房・お岩(秋山菜津子)とよりを戻すため、辻斬りの仕業に見せかけて義父・四谷左門(山本亨)を惨殺し、その犯行を隠してお岩と復縁。しかし、産後の肥立ちが悪いお岩を次第に疎ましく感じた伊右衛門は、隣家の伊藤喜兵衛(小野武彦)から、孫娘・お梅(有薗芳記)との縁談を持ちかけられ、喜兵衛に「血の道の薬」と騙されて毒を飲み、顔が崩れたお岩を見殺しにする。更にお岩の死体を奉公人・小仏小平(谷山知宏)の遺体と共に戸板に載せて川に流すのだが、その夜から数々の奇怪な出来事に襲われるようになり……。

新たな視点で甦る
鶴屋南北の世界!

今回上演されている『東海道四谷怪談』は、鶴屋南北が書いた戯曲をアレンジしたバージョン。歌舞伎の節回しを残しながら原本を大胆にカットしたことで(上演台本:フジノサツコ)、人間関係の複雑さが程よく整理されていると感じました。

東海道

(撮影:谷古宇正彦)


森新太郎さんの演出で特筆すべきなのは、お岩を演じる秋山菜津子さん以外、全ての女性役を男性俳優が演じているという点。これによって、独特の気味の悪さや、ある種の面白みが増していたように思います。特に若くて初心なお梅役の有薗芳記さんの佇まいはキュートでありながら良い意味で不気味!夜の婚礼の場面の不可思議感は不条理劇の大御所・別役実さんの作品を観ているかのようでした。

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