ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『ブラスト!』で感情の旅を。ソリスト石川直に聞く(4ページ目)

マーチングバンドやドラム・コーをエンターテインメント作品に昇華させた『ブラスト!』は、現在、シリーズ9回目の日本ツアーまっただ中。日本初演以来、ソリストとして活躍するパーカッショニストの石川直さんにインタビューしました。

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

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今回は色がテーマ。

 

長年愛される『ブラスト!』は“奇跡のショー”

——『ブラスト!』シリーズは1999年にロンドン公演、2001年ブロードウェイ公演、日本公演も9回目と、ここまで続いてきたこと自体が素晴らしいです。
“奇跡のショー”と呼ばれていますからね。いろいろな偶然が重なって、続いているのだと思います。単純なコンセプトで、普遍的であることも人気の理由でしょう。人間のエネルギーをぶつけるショーなので、ストーリーやプロットがあるわけじゃない。観る方、聞く方によって、いろいろな受け取り方、楽しみ方ができるのです。
そして『ブラスト!』は色をテーマにしていて、 “エモーショナルジャーニー(感情の旅路)”ともいわれています。曲が変わる都度、会場の空気ががらっと変わるので、肌で、直感で感じていただけるかと。
たとえば米所君が去年からソロで演奏している曲は「ロス」、つまり“失う”というタイトルです。タイトルの意味を知らなくても、胸をぐっと掴まれるような切なく哀しい思いが伝わってくる。反対にラストの「マラゲーニャ」は花火大会のフィナーレみたいに、ノリノリでラテンのお祭り感たっぷり。いろいろな感情を味わえるというわけです。

——今回は47都道府県ツアーと日本全国を回っていますね。
ある一週間は朝7時ぐらいに起きて4時間ほどバスで山の中を走り、劇場に入ったら機材をおろしてセッティング。ウォームアップ、サウンドチェック、リハーサル。着替えて、ショーをやって、終わったら30分で片付けて、バスに乗り、闇の中を3、4時間走って着いてホテルに入る。サバイバルゲームのようにタイトな1週間もあれば、東京や大阪みたいに一カ所に長時間滞在して、同じホテルから通勤。ゆっくりと街を楽しむこともあります。
土地によって、人々の反応はかなり違いますね。ものすごくじっくり噛み締めて静かに聴いてくださるところもあれば、始まるや否やピーピー盛り上がるところもあります。

——そういえば以前、『ブラスト!』を観た時、隣の外国人女性が「あれ、私の息子なのよ!」と。息子さんの晴れ姿を観にアメリカから来日したと、故郷の写真まで見せていただいたことがあります。
ほんと、客席もアットホーム(笑)。アメリカのキャストのご家族は、日本観光と晴れ舞台を観に、結構いらっしゃいますね。アメリカでは文化として定着しているせいか、アメリカの観客は『ブラスト!』を若者たちが頑張っているわね、と温かく見守ってくれている感じ。対して日本では、来日カンパニーとして普段触れることのない文化、非日常を味わうという意味が強いのかなと思います。マーチングバンドをやっている人たちにとっては、頂点に触れるという価値のあることでもあるはず。

 

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