一括受電サービス業者のスキーム
このような高圧一括受電の導入に伴う投資負担や保守点検、そして検針から出納請求等の運営業務までの一切を管理組合に代わって引き受けるのが、一括受電サービス業者です。このプランの場合、下記のような条件を提示するのが一般的です。
1) 管理組合と10年~15年の契約を締結する。(更新条項付き)
2) 管理組合には一定の電気料金の削減を約束する。
(例:共用部分の電気料金の40%相当額)
シンプルに考えると、地域電力会社に代わってサービス業者と受電契約することで、一定の削減メリットを労せず享受できる商品であると言えます。ただし、一括受電する主体はあくまでサービス業者で、管理組合ではないことに留意すべきです。
サービス業者スキームの注意点
管理組合としては、サービス業者のスキームを選択するか、自らが事業者となるかを決めるのに当たって、それぞれのコストパフォーマンスやリスク等を比較検討することが重要になってきます。ただ、サービス業者の管理組合に対する提案事例を見る限り、設備投資や全体の電気料金削減額等の明細が開示されることはなく、結果として管理組合が享受できる削減金額だけを提示するのが実態のようです。
また、変電設備等の投資の償却に15年程度かかるというのが業者の言い分ですが、実際の耐用年数は25年以上、保守点検を怠らなければ30年以上はもつと言われています。
しかしながら、設備償却が終わった後もサービス業者との契約条件が当初のまま継続更新する想定になっているのが標準的です。
また、管理組合から中途解約を申し出た場合、原状復旧工事の負担も伴うことから事実上解約は困難と考えられますので、実際には20~30年の長期間の契約に及ぶことに留意すべきです。
組合員全員の同意が必要
高圧一括受電の導入を図るには、各専有住戸の検針メーター等を撤去して受電契約を解除してもらう必要があるため、組合総会で承認を得るだけでなく、最終的には組合員全員から同意書を取り付ける必要があります。したがって、どちらのスキームを選択するにしろ、円滑に推進していくにはそのメリットだけでなく、デメリットやリスク等の留意事項も正しく認識してもらう必要があります。
そのためには、総会で決議する前に住民説明会を開催するなど、なるべく多くの組合員が理解し、賛同してくれるよう努めることが大切です。
マンション管理士としては、執行機関である理事会を適切にサポートし、全体のコンセンサスが得られるよう適宜助言していくことが求められます。