傷ついたブランドイメージ
中国における腐敗肉加工事件は大きな波紋を呼んでいる
マクドナルドでは、チキンナゲットにその加工肉を使用していたとして即刻販売を中止。競争激化の収益悪化局面で業績低迷にあえぐ同社に、食品衛生面からの悪評が追い打ちをかける事態となりました。マクドナルドほどの大手企業がなぜ、衛生管理が難しく食品リスクの大きい中国加工肉に手を出してしまったのでしょうか。
ファーストフード業界の宿命が「食の安全」を脅かす
理由は簡単です。本来、規模の経済にモノを言わせて「一定の品質」を保ちつつプライスリーダーとして君臨するはずの業界トップ企業でありながら常に安売りを強いられるというファーストフード業界の宿命をマクドナルドは背負っています。そうした宿命が、「品質」を危うくするようなコスト削減をあたり前のものとして受け入れざるを得ない状況に追い込んでいたのです。マクドナルドが採用する典型的なローコスト・オペレーションとは何か。資本力にものをいわせた投資により生産拠点を拡大することで大量生産システムを構築し、受注の拡大に伴って加速度的に生産コストを下げるやり方です。規模の経済が働くやり方である限りにおいては、「一定の品質」維持は守られます。しかし何らかの理由により、規模の経済の限界点を超えたさらなるコストダウンをおこなうことが「一定の品質」維持を困難にし、食品においては「品質=食の安全性」の破綻リスクを抱えることになるのです。
2004年、赤字にあえぐマクドナルドに迎えられた原田泳幸前CEOは、バリュー戦略という同社の安売り路線の見直しとブランド価値の向上により、業績回復を実現します。しかしながら、その際に顧客呼び戻しの武器として登場させたのが「100円ハンバーガー」だったという事実は、同社が安売り路線から脱却できなかったということであり、このことはまた、ファーストフード業界の宿命を明示する事実だと言っていいでしょう。
認識すべきコストとリスクのトレードオフ
ハンバーガー業界は安い肉を世界中に求めている
過度のコスト削減が品質の低下リスクとトレードオフの関係にあることは、業界を問わずあてはまる原理です。しかし、こと食品に関しては品質の低下がイコール消費者の健康にもかかわる重要な問題です。デフレ脱却の兆しが見えはじめた今、ファーストフード業界の行き過ぎた低価格競争は見直すべき局面に来ているのかもしれません。
今回のマクドナルドのケースは、まさしくこの限界点を超えた状況が生みだした食の安全性破綻リスクが顕在化したものと言っていいでしょう。より安価な労働力を求めた海外生産では、コスト低減と品質リスク増大のトレードオフが確実に成立してしまうのです。