木造住宅密集地域では、大地震による倒壊や火災による延焼の危険性がたいへん高いとされ、その対策が急務になっています。
しかし、このような「木密」(もくみつ)地域で販売される建売住宅や中古住宅も少なくありません。それらを購入する際には、地域の特性をしっかりと理解しておくようにしましょう。
大都市圏にある古くからの住宅地には、第2次世界大戦で大きな被害を受けることなく、その後の高度成長期に無秩序な住宅建設が進められたようなところがいくつも存在します。
建築規制も十分ではなかったため、狭あい道路が多く入り組み、違法建築や既存不適格建築物も少なくありません。年月が経ってそれらの住宅では老朽化が進んでいるものの、居住者自身が高齢化したり、相続で空き家になったりして、建物の改修や更新がされない例も多いでしょう。
耐震化や不燃化対策の遅れた古い建物が、木造住宅密集地域には数多く混在しているのです。
大地震の揺れで古い建物が倒壊して前面の狭い道路をふさげば、消防車や救急車などが通れないだけでなく、人々の避難の妨げにもなります。さらに火災が発生すれば、またたく間に燃え広がってしまうことも考えなければなりません。
東京都では2013年4月時点で17区(46地区、約2,050ha)を指定して「木造住宅密集地域整備事業」を実施しているほか、大阪府では2014年6月に大阪市の1,333ha、堺市の54ha、豊中市の246haなど7市(約2,248ha)を対象に「整備アクションプログラム」を策定しました。
さらに、横浜市では神奈川区、西区など5区(約1,110ha)を「建物の不燃化を推進する地域」として、2015年度から新たな建築規制が設けられる予定です。これは小規模な一戸建て住宅でも「準耐火建築物」とすることを義務づける内容となっています。
横浜市による規制では老朽建物の建て替えに主眼がおかれ、規制に先立って2014年10月1日からは最大300万円(老朽建物の除却150万円、設計費用15万円、工事費用135万円)の補助制度を導入し、2022年度まで継続される見込みです。
「木造住宅密集地域」の定義は自治体によって異なりますが、他の自治体でも木密の早期解消を目指して何らかの対策がとられていることもあるでしょう。
いずれにしてもこのような地域で住宅を購入する際には、都市計画法や建築基準法による一般的な制限とは別に、独自の建築規制や制度が設けられていたり、不燃化への誘導が行なわれていたりする場合があることに留意しなければなりません。
規制などがない場合でも、いざというときを想定した配慮を自主的にすること、災害時への対応をスムーズにするために町内会の活動への積極的な参加なども考えることが大切です。
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